「VMware Fusion 12(12.0.0)」リリース、「macOS Big Sur」をサポート

Dell TechnologiesグループのVMwareより米国時間2020年9月15日、macOS(OS X)ベースのデスクトップ仮想化ソフトウェア「VMware Fusion」のアップグレードリリースに相当する「VMware Fusion 12.0.0 Pro Build 16880131(GA版)」がリリースされ、現在VMwareによる公式ダウンロードページを通じて、日本語含む複数言語リソースを包含する マルチリンガル版のバイナリパッケージが入手可能となっています(dmg 約641.67MB。Ver. 10以降からは、アップデートライセンスにて更新可能となっています)。

Hypervisor APIに対応し、eGPU、「USB 3.1」もサポート

定期的にリリースされていたTech Previewチャンネルの成果がStableチャンネルにマージされ、米国時間2020年8月20日付のプレスリリース、VMware Fusion Blog(公式ブログ)を通じて機能概要等がアナウンスされていた当版では、一連のテストリリースを通じた主な特徴として、以下の項目等が示されています(「11.5.6 Build 16696540」からの主な変更点となります)。

  • サポート対象オペレーティングシステムの追加。Appleによる次世代デスクトップオペレーティングシステム「macOS Big Sur 11.0」を ゲストOS、ホストOSとして試験的にサポート(ゲストOSとしては、Mac App Storeから入手可能なインストーラー(.app)、或いは APFS(Apple File System)が適用されたリカバリーパーティションを通じてインストール可能。インストーラパッケージに含まれる「InstallESD.dmg」を抽出する必要はない)
  • 新たに「Debian 10.5」「RHEL 8.2(Red Hat Enterprise Linux 8.2)」「CentOS 8.2」「Fedora 32」「SLE 15 SP 2(SUSE Linux Enterprise 15 Service Pack 2)」「FreeBSD 11.4」「VMware ESXi 7.0」をゲストOSとしてサポート。プリコンパイルされたカーネルモジュールを伴う ゲストOS拡張機能「VMware Tools」が同梱され、自動インストール機能「Linux Easy Install(Linux簡易インストール)」オプション、共有フォルダー、ダイナミックレゾリューション等の諸機能を利用可能に(VMwareは、オープンソースのゲストOS拡張機能「open-vm-tools」の利用を推奨している)
  • ハイパーバイザスタックを再構築し、macOSが提供するネイティブのハイパーバイザー「Hypervisor API」に対応(ホストOSが「macOS Big Sur 11.0」の環境において、サードパーティ(この場合はVMware)によるカーネル拡張(.kext)を完全に廃止
  • デバイス関連の改善。ホストコンピュータ(Mac)に対して外部GPUが接続されている場合に、GUIクライアント(VMware Fusion.app)におけるセッティングエディタを通じて、仮想マシン毎に外部GPUを割り当て可能に。この改善によって、「AMD Radeon 5700」を搭載したeGPUを使用して、MacBook Airのビルトインのディスプレイにおいて、Windows(ゲストOS)に向けた「DirectX 11(Direct3D 11)」グラフィックスをレンダリングする事等が可能に
  • 仮想マシンをスケールアップし、仮想マシンにおいて 最大32コアの「Virtual SMP(Virtual Symmetric Multiprocessing、仮想対称型マルチプロセッシング)」に対応(仮想マシンを32コアで実行する場合には、ゲストOS、ホストOSの双方が、32基の論理プロセッサに対応している必要がある)
  • 仮想マシン毎に、最大128GBのRAM容量、8GBの共有グラフィックスメモリーを割り当て可能に
  • Virtual xHCI(Virtual eXtensible Host Controller Interface)コントローラーを「USB 3.0 SuperSpeed」から「USB 3.1」に変更し、仮想マシンにおいて「USB 3.1 SuperSpeed Plus(最大10Gbps)」をサポート
  • ホストOSにおける「Metal」グラフィックスAPIへの対応の改善。OpenGLを置き換え、3Dグラフィックスのレンダリングをアクセラレートする同APIへの対応の改善により、ゲストOSにおいて「DirectX 11(Direct3D 11)」「OpenGL 4.1」をサポート。Windows(ゲストOS)に向けた「DirectX 11」では、「MSAA(Multisample anti-aliasing)」「Shader Model」「Cubemap Array」テクスチャに対応し、「DirectX 11(Direct3D 11)」を含む ゲーム、アプリケーション実行時のパフォーマンス(バッテリーパフォーマンスを含む)を改善する(「macOS Sierra 10.13」以降において対応)。両APIをサポートするためのハードウェア要件は、「MacBook 2015(Retina、12inch、Early 2015)」以降、「MacBook Air(13inch、Early 2015)」以降、「MacBook Pro(Retina、13inch、Early 2015)」以降、「MacBook Pro(Retina、15inch, Mid 2015 with Dual Graphics)」以降、「Mac mini(2018)」以降、 「iMac(21.5inch、Late 2015)」以降、「iMac (Retina 5K、27inch、Late 2014) 」以降、「iMac Pro(2017)」以降、「Mac Pro(Late 2013)」以降。対応するゲストOSは「Windows 7」以降、vmwgfxを伴うLinux
  • サンドボックス化されたグラフィックス。vmxからグラフィックスレンダーを削除し、それを個別のサンドボックスプロセスとして実行する事によって、仮想マシンのセキュリティを強化
  • ドラッグアンドドロップ、コピーアンドペースト、HGFS(Host Guest File System)利用時におけるファイル転送速度の向上、仮想マシンのシャットダウンに要する時間の短縮等、各種のパフォーマンスを改善
  • コンテナ実行時におけるパフォーマンスを改善
  • プライベートクラウドプラットフォーム「VMware vSphere 7.0」のサポート。「vSphere 7.0」に接続し、ローカル仮想マシンのリモートへのアップロード、或いはリモート仮想マシンのローカルデスクトップへのダウンロードが可能に
  • 「vctl login」コマンドにて、コンテナイメージレジストリにログイン可能に
  • ローカルのKubernetesクラスターを実行するための「KIND」ツールをサポート(Dockerコンテナをノードとして使用可能に)
  • アクセシビリティのサポートを改善し、「WCAG 2.1(Web Content Accessibility Guidelines 2.1)」基準に準拠
  • Pro版に向けて実装されていた、仮想マシンの作成や設定メニューに対する制限機能(制限付き仮想マシン、期限付き仮想マシンの作成、実行機能)を除去
  • SwaggerベースのRESTフルなAPIインターフェイス「Fusion REST API(Fusion Representational State Transfer Application Programming Interface)」の仕様を変更し、ローカルホストにおいてのみ利用可能に(外部接続を前提として実装されていた、一部のセキュリティ強化機能を除去)
  • VMware Fusionが システム全体のパスを構成可能な事に起因して、特権の昇格が引き起こされ得た脆弱性を修正。この問題では、通常のユーザー権限を有する攻撃者によって管理者ユーザーが騙され、当該システムにおいて 悪質なコードが実行される危険性が指摘されていた(The Common Vulnerabilities and Exposures project(cve.mitre.org)は「CVE-2020-3980」、VMwareセキュリティアドバイザリは「VMSA-2020-0020.1(Moderate)」の共通脆弱性識別子を各々割り当て)
  • ホストコンピューター(Mac)がスリープから復帰した後に、ゲストOSに接続されていたUSBデバイスを、再び認識する事ができないケースが確認されていた問題を修正
  • 「VMware Fusion 11.5.5」にアップデートした後に、ゲストOSにおいて 2TBのUSBドライブを認識する事ができなかった問題を修正
  • 「macOS Mojave 10.14(ゲストOS)」において、ホストコンピューターに接続されているUSBデバイスが認識されず、使用する事ができなくなっていた問題を修正
  • ホストディレクトリーがコンテナーの匿名ボリュームにマウントされていない場合に、コンテナが停止した後に、当該ボリュームにおけるユーザーデータが 永続的に保持されないケースが確認されていた問題を修正
  • And many others…

ライセンスが変更され、「VMware Fusion Player」の個人利用は無償にて利用可能。Pro版は「VMware Workstation Pro」も利用可能

当版では、ライセンスに大きな変更が行われ、従来までのStandard版が廃止され、代わりに新規の商用ライセンス149ドル(アップグレード79ドル)の「VMware Fusion Player」がラインアップされています。この「VMware Fusion Player」は、個人利用に限り無料にて利用可能となっており、機能的には スナップショットやコンテナ等、現在のStandard版にて提供されている機能が、そのまま引き継がれます。

上位版の「VMware Fusion Pro」も引き続き提供され、こちらは新規ライセンス199ドル(アップグレード99ドル)に設定され、単一のシリアルにて「VMware Fusion Pro」「VMware Workstation Pro」の何れかを3台のコンピュターにまでインストールして実行する事が可能となっています(MacがApple Siliconに移行した後には、Intel版のWindows(ゲストOS)を実行する環境としても、活用する事ができるでしょう)。

当版におけるシステム要件は、64bitプロセッサを搭載したApple製コンピュータ、ホストOSは「macOS Catalina 10.15」以降(「macOS Big Sur 11.0」を含む)となっています。Ver. 11.5にてサポートされていた「macOS High Sierra 10.13」は 対象外となりますので御注意下さい(ゲストOSとしてのOS X(macOS)のサポートも「10.15」〜「11.0」となります)。また、既知の問題点を含む その他の詳細が、リリースノート、VMTN(VMware Technology Network)等を通じて確認可能となっています。