「Linux Mint Debian Edition 5」と「Linux Mint 21」

愛Linux Mint teamによるLinuxディストリビューション「Linux Mint」には、年に2回のペースでデスクトップ環境別にアップデートされる Cinnamon Edition、MATE Edition、Xfce Editionの他に、ベースとなるオペレーティングシステムにDebian GNU/Linuxを採用し、リリースサイクルも異なる「Linux Mint Debian Edition」が並行して開発されています。当エントリーでは、その特徴と役割、及び「Parallels Desktop 18 for Mac」における「Linux Mint 21 Cinnamon Edition(Vanessa)」との比較(ディスク使用量、メモリー使用量等)等を実測を交えて纏めています。

Ubuntuを介さない、ライトなホットスタンバイ

定期的にリリースされる通常版のLinux Mintは、実績のあるUbuntu LTS(Long Term Support、長期サポート)をベースとしてるため、信頼性や可用性等、RASISを構成する基礎は ある程度に保障された状態でユーザーに提供されています。

しかしながら、Ubuntuに何れかの事由が生じて ベースとして使用する事ができなくなった場合には、Linux Mintの開発は行き詰まる事が想定されます。LMDE(Linux Mint Debian Edition)は、万が一そのような事態が発生した場合にも、開発元が同じユーザーエクスペリエンスの提供を粛々と継続して行えるようにする事を目標とした、ライトな待機系(ホットスタンバイ)として位置付けられています。

また、Debian Editionの開発を経る事によって、通常版がどれだけUbuntuに依存しているのか、或いは各種のイベントにどれだけの工数が要されるのかを評価する事が可能となるため、プロジェクトの継続性を高める意味においては、非常に有効な手段と言えるでしょう(LMDEは、Linux Mint teamによる開発ターゲットの一つでもあり、これによって、同チームが開発しているソフトウェアが、Ubuntu以外のディストリビューションとも一定の互換性を有している事を保障しています)。

もう一つの特徴は、その軽量化にあると言えます。Ubuntu自体がDebianをベースとしたディストリビューションであるために、更にその上で動作する通常版のLinux Mintは、パフォーマンスやリソース使用量(ディスク使用量、メモリー使用量)等が課題の一つとして指摘されています。

それらの課題を現実的に解決するためのワークアラウンドが、Debian GNU/Linuxベースの「Linux Mint Debian Edition」となります。

デスクトップ環境はCinnamonのみ。インストールプロセスは通常版と変わらない

定期的にリリースされる通常版では、フラッグシップのCinnamonの他に、MATE、Xfceの各エディションを加えた合計3種のデスクトップ環境が提供されていますが、Debian Editionにおけるデスクトップ環境は、Cinnamonの一択となります。

イントールプロセスは、通常のCinnamon Editionと大差ありません。Live CDを そのままインストールCDとして使用する事が可能となっており、ウィザードに従って インストールオプションやタイムゾーン指定、キーボードレイアウトの選択、及びアカウント設定等を行っていく事となります。

インストールプロセスの詳細は、「Linux Mint 20.2(Uma)」のリリース時のエントリー等に纏めています。

「Parallels Desktop 18 for Mac」の環境にて、ディスク使用量、メモリー使用量を比較

「軽い」というのは、どの程度に軽いのか。「Parallels Desktop 18 for Mac(Parallels Desktop 18.0.1)」に「Linux Mint Debian Edition 5」と「Linux Mint 21 Cinnamon Edition(Vanessa)」をインストールして、双方のディスク使用量、メモリー使用量等を比較してみました。

尚、「Parallels Desktop for Mac」は現在、IntelとApple Siliconの両アーキテクチャーに向けて2種のビルドを提供していますが、Linux Mintは(現時点では)x86-64版のみの提供となるため、このテストもIntel Macで行っています。結果は以下の通りとなっています。

インストール直後のディスク使用量

ゲストOS拡張機能「Parallels tools」のインストール前に、双方の仮想マシン(.pvm)を比較

  • Linux Mint Debian Edition 5 — 約7.74GB
  • Linux Mint 21 Cinnamon Edition — 約9.45GB

起動直後のメモリー使用量

Linux Mint(ゲストOS)のTerminal(端末)から「free」コマンドにて確認。メモリー使用量は「total」-(「free」+「buffers/cache」)の値。つまり「used」の値から読み取れます。

  • Linux Mint Debian Edition 5 — 約596MB
  • Linux Mint 21 Cinnamon Edition — 約600MB

Linux Mint Debianのメモリー使用量
↑Linux Mintのメモリー使用量の比較。上が「Linux Mint Debian Edition 5」で、下が「Linux Mint 21 Cinnamon Edition(Vanessa)」

どちらもDebian Editionの方が下回っていますが、特にメモリー使用量に関しては、Cinnamon Editionも健闘しています(「Linux Mint 20.2(Uma)」辺りから、メモリー使用量の削減に注力している印象を受けます)。

LMDE(Linux Mint Debian Edition)はコミュニティも小さく、技術情報を入手するのも容易ではありませんが、その軽快さと機能性のバランスは 一つの選択肢として健闘する価値があると感じています。