「VMware Fusion Tech Preview II 22H2」リリース、仮想TPMチップの対応に「Rosetta 2」が不要に

米Broadcom傘下のVMware, Inc.より米国時間2022年9月22日、開発過程にある 次世代デスクトップ仮想化ソフトウェア「VMware Fusion Tech Preview(for macOS)」の最新プレビュー版(パブリックベータ「Fusion 2022 TP」)に相当する「VMware Fusion Tech Preview II 22H2 Build 20486664(e.x.p. 20486664 Sep.)」がリリースされ、現在VMwareによる公式ダウンロードページを通じて、日本語含む複数言語リソースを包含する マルチリンガル版のバイナリーパッケージが入手可能となっています(当版は、現時点では開発過程にあるプレビュー版に相当します。何れの機能も正式なサポートを受ける事はできませんので、試用する場合には御注意下さい。バージョン表記は、現時点では暫定的に付されているものです。今後の開発過程において、正式なバージョン番号が付与されます)。

「Ubuntu 22.04.1 LTS」「Ubuntu 22.10」にも試験的に対応

次世代版のテスト、評価等を主目的としたプレビュー版として位置付けられている当版では、Intelバイナリートランスレーター「Rosetta 2」を介さずして「Virtual TPM 2(Virtual Trusted Platform Module 2、仮想TPM 2)チップに対応し、ARMベースのSoC(System on a Chip)「Apple Silicon(Apple M1、Apple M2 Mac)」をホストシステムとしてする環境において、100%ネイティブなARM64(AArch64)アプリケーションとして実行可能となった他、関連ドキュメントの一つとしてテストガイドがアップデートされています。

また、「Ubuntu 22.04.1 LTS(Jammy Jellyfish)」「Ubuntu 22.10(Kinetic Kudu)」をゲストOSとして試験的にサポートしています(現時点で3Dグラフィックスはサポートされておらず、2Dグラフィックスのみの対応となります。進捗は、Canonicalによるプロジェクト管理システム「Launchpad」のバグトラッカーにおいて確認可能となっています)。尚、既にサポートされておるLinux(ゲストOS)においては、ハードウェアアクセラレーションによる3Dグラフィックス、及び「OpenGL 4.3」に対応しています(「Linux kernel 5.19」以上、3Dグラフィックスライブラリー「Mesa 22.1.3(Mesa 3D Graphics Library 22.1.3)」以上を実装する環境において対応)。

尚、今回のアップデートは自動更新には対応しておらず、VMware Fusion Tech Previewのダウンロードページから手動でダウンロードする必要があります(Technology Previewのアップデートがこれほど多くなるとは想定していなかったそうです)。

Apple Silicon on Intel、Intel on Apple Siliconといった、アーキテクチャーをクロスしてのゲストOSの実行には対応しない

GUIクライアント(VMware Fusion.app)を含むアプリケーション全体は、Intel、Apple Silicon(Apple M1、Apple M2)の両アーキテクチャーにおいてネイティブ実行可能な「Universal 2 Binary」としてビルドされていますが、アーキテクチャーをクロスしてのゲストOSの実行(例えばIntelホストにおけるARM(ゲストOS)の実行、Apple SiliconホストにおけるIntel x86_64(ゲストOS)の実行)には対応していません。

「macOS Big Sur(macOS 11.0)」「macOS Monterey(macOS 12.0)」「macOS Ventura(macOS 13.0)」において実装されているバイナリートランスレーター「Rosetta 2」では、Kernel Extension(カーネル拡張)、及びx86-64ベースの仮想マシン、仮想化ソフトウェアはサポートされない伝えられている事から、エミュレーターとしての機能(命令セットのエミュレーション)を提供しないと伝えられている現状では、Intel Macに向けた これまでの「VMware Fusion」にて作成されたx86-64ベースの仮想マシン(ゲストOS)は、Apple Silicon(Apple M1、Apple M2)ホストの「VMware Fusion」では動作しないと結論付けて良いでしょう(Apple Siliconを搭載したMacにおいては、必要なエンジニアリング作業とビジネス価値のバランスを考慮して、x86ベースのゲストOSのインストール、実行をサポートする計画はないと伝えられています)。

macOS(ゲストOS)の現状について

macOSのゲストOSとしての実行(moA(macOS on ARM64))は、Appleと協力して解決すべき課題が残されているために現在調査中の段階にあり、短期的にはサポート対象の範囲外になると伝えられています。

open-vm-toolsのARM版(aarch64)版も利用可能

Linux(ゲストOS)に向けた「VMware Tools」のオープンソース実装「open-vm-tools」 のARM(aarch64)プラットフォーム版は、一部のディストリビューションに向けて提供が開始されています。従って、対応するシステムでは ゲストOS拡張機能をインストールする事によって齎される各種の機能(3Dグラフィックスに向けたアクセラレーション、タイムシンクロナイズ、ダイナミックレゾリューション(フルスクリーンモードを含む)、ゲストOS、ホストOS間におけるテキストのコピーアンドペースト、ファイルのドラッグアンドドロップ等)を利用する事も可能となります。

また、この対応を拡充するために、種々のLinuxアップストリームプロジェクトと引き続き協力して、open-vm-toolsをサポートするために必要なカーネルパッチを構築している状況であるとも伝えられています。

WoA(Windows On ARM)の仮想マシンでの実行は?

WoA(Windows On ARM)の仮想マシンでの実行は、技術的に可能であっても製品構成、及びライセンスの壁が実現を阻む事となるかも知れません。これが製版版ではなく、インサイダープレビュー(Windows 11 on ARM Insider Preview)であっても、ライセンス版の「Windows 10」がインストールされたシステムに対してのみ、ゲストOSとしてインストールする事が可能であると解釈する事ができます(つまり、ARM64をゲストOSとして実行可能と許諾しているハードウェアのリストにApple Siliconが含まれていないため、インサイダープレビューであっても、Apple製コンピューターでの実行はグレーゾーンではないか、といった懸念が残ります)。

尚、WoA(Windows On ARM64)をゲストOSとして実行可能なシステムとしては「Microsoft SQ1」「Microsoft SQ2」「Qualcomm Snapdragon 7c」「Qualcomm Snapdragon 7c Gen 2」「Qualcomm Snapdragon 8c」「Qualcomm Snapdragon 8cx」「Qualcomm Snapdragon 8cx Gen 2」「Qualcomm Snapdragon 850」が明記されており、このリストに「Apple M1、Apple M2」は含まれていません。

この度リリースされたTech Previewは、プレビュー用のライセンスが認証された状態で提供されているので、新たにシリアルナンバー等を入手する必要はありません。期間限定のプレビュー版ではありますが、フリーウェアの様な感じで試用する事ができます(別途に、VMTN(VMware Technology Network)のアカウントが必要となります)。

また、現行GA版「VMware Fusion 12」のサポート期間は延長されており、必要な更新が2022年12月まで提供される予定となっています。