Oracle Corporationより米国時間2022年10月10日、マルチプラットフォームに対応したオープンソースのデスクトップ仮想化ソフトウェア「Oracle VM VirtualBox」のアップデートリリースに相当する「Oracle VM VirtualBox 7.0.0 Build 153978(Oracle VM VirtualBox 7 Update 0 Hotfix 0)」がリリースされ、プロジェクトサイト、及びOracleによる公式ダウンロードページを通じて、macOS(Intel)、Windows、Linux、Solarisを対象としたバイナリーパッケージ、ソースコード、SDK(Software Development Kit)、PUEL(VirtualBox Personal Use and Evaluation License)に準拠したエクステンションパック(Oracle VM VirtualBox Extension Pack)が入手可能となっています(バイナリーとソースコードには、ライセンスとしてGPLv2(GNU General Public License Version 2)が適用されています)。
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macOSホストにおけるコアに、Appleによる「Hypervisor.framework」を採用
米国時間2022年8月25日よりテストリリース(パブリックベータ)が開始されていた当版では、一連のテストリリース(「Beta 1 Build 153351」~「Beta 3 Build 153829」)を通じた主な特徴として、以下の項目等が示されています(「VirtualBox 6.1.38」からの主な変更点となります)。
主要な改善
- macOSホストにおいて、従来まで使用していたKernel Extension(カーネル拡張)に基づく謹製のハイパーバイザーから、Appleによるビルトインのユーザーランドフレームワーク「Hypervisor.framework」に切り替え(Apple HVの公式ドキュメントは非常に簡素化されており、Apple Siliconへの対応も含めて 多くの推測に基づく作業が要されているため、当該のエリアには多数のバグが存在する可能性があるとの事)
- サポート対象オペレーティングシステムの追加。Microsoftによるデスクトップオペレーティングシステム「Windows 11」をゲストOSとしてサポート。「New Virtual Machine Assistant(新規仮想マシンアシスタント)」において、同オペレーティングシステムのISOイメージを正確に認識し、自動インストール機能「Windows Easy Install(Windows簡易インストール)」オプション、共有フォルダー、Samless(シームレス)モード等の諸機能を利用可能に
- 仮想マシン全体を完全に暗号化可能に(現時点でGUIは提供されておらず、CLI(Command Line Interface、コマンドラインインターフェイス)に限定した対応)。Ver. 6.1までは仮想ディスク(ディスクイメージ)のみの暗号化に止まっていたが、当版では 仮想マシン構成、NVRAM、及び各種のログも暗号化可能に(この機能は、「PUEL(VirtualBox Personal Use and Evaluation License)」のみで提供される)
ユーザインターフェイス(GUI)関連の改善
- GUIクライアント(Oracle VM VirtualBox Manager(Oracle VM VirtualBoxマネージャ))を大幅に刷新し、新たにダークモードをサポート
- 実行中のゲストOSのパフォーマンス統計(CPU使用率、メモリー使用量、ディスクI/Oレート等)をリスト表示する、「top」或いは「resource monitor」に類似した新たなユーティリティを追加
- 複数の項目が選択されている場合の、仮想マシンリストの動作を改善
- 各種のウィザードの安定性、及びユーザービリティを改善
- ユーザインターフェイス(GUI)のアクセシビリティを改善
- 「New Virtual Machine Wizzard(新規仮想マシンウィザード)」を再構築。ゲストOSの自動インストールを統合し、ワークフローをより合理化
- ユーザーマニュアルのナビゲートと検索を可能にする、新たなヘルプビューアーウィジェットを追加
- セッティングエディター(仮想マシン設定)、及びウィザードの安定性、ユーザービリティを改善すべくして、グローバルプリファレンスを再実装
- X11プラットフォームにおけるマルチモニター環境において、マウスのハンドリングを改善
- NATネットワークのスタッフが、グローバル設定からグローバルネットワークマネージャーツールへと移動
- Extension Packマネージャーが、グローバル設定からグローバルツールへと移動
- クロスプラットフォームアプリケーションフレームワーク「Qt」の最新版をマイグレート
ゲストOS拡張機能「Guest Additions」関連の改善
- 「Guest Additions(Linux)」を対象として、自動更新を初期サポート
- ゲストOSのスクリーンサイズの変更機能を作り直し、一部のデスクトップ環境(ゲストOS)との基本的な統合機能を追加(Linux Additions)
オーディオ関連の改善
- オーディオレコーディングの改善。ロイヤリティフリーな動画のコンテナーフォーマット「WebM」を対象としたデフォルトのオーディオフォーマットとして、Xiph.orgによるオープンフォーマットの非可逆圧縮音声ファイルフォーマット「Vorbis」を採用。これに伴い、Ver. 6.1まで使用していた「Opus」の実装を廃止
- オーディオドライバーを明示的に変更する事なく、異なるプラットフォーム間で仮想マシン (仮想アプライアンス) を移動する事ができるように、デフォルトのホストドライバータイプを追加。デフォルトドライバーを選択した場合には、プラットフォームに対して最適なオーディオバックエンドオプションが使用されるべくした改善を適用(この機能は、新規に作成された仮想マシンではデフォルトの機能となる)
クラウド関連の改善
- OCI(Oracle Cloud Infrastructure)との統合。クラウドで管理している仮想マシンを、GUIクライアント(Oracle VM VirtualBox Manager(Oracle VM VirtualBoxマネージャ))に追加し、ローカル仮想マシンとして制御可能に
- ローカル仮想マシンを対象として、クラウドネットワーキング機能を強化。OCI(Oracle Cloud Infrastructure)等のクラウドネットワークに対して、ローカル仮想マシンを容易に接続可能に
- クラウド関連の改善。ローカル仮想マシンを対象として、クラウドネットワーキング機能を強化。OCI(Oracle Cloud Infrastructure)等のクラウドネットワークに対して、ローカル仮想マシンを容易に接続可能に
ゲストコントロールの改善
- コマンドラインユーティリティ「VBoxManage」を介してGuest Additionsをアップデートする場合に、ゲストOSを待機、及び(或いは)再起動するための機能を実装
- ゲストコントロールの「waitrunlevel」サブコマンドを追加して、ゲストOSが特定の実行レベルに達するまで待機する事が可能となった
デバイス関連の改善
- 仮想マシンに対して、IOMMU(Input/Output Memory Management Unit)デバイスを追加可能に(Intel、AMDバリアント)
- 仮想マシンに対して「Virtual TPM 1.2(Virtual Trusted Platform Module 1.2)」「Virtual TPM 2.0(Virtual Trusted Platform Module 1.2)」チップを追加可能に
- EHCI(Enhanced Host Controller Interface)、xHCI(eXtensible Host Controller Interface)に対応したUSBコントローラーデバイスが、オープンソースの基本パッケージの一部となるべくした変更を適用
その他の改善
- Windowsホストを対象として、ユーザーがログインしていない場合においても、仮想マシンを実行する事が可能となるように、セッション 0において自動起動された仮想マシンを実行するための試験的なサポートを追加(この機能はデフォルトでは無効化されているため、利用に際してはマニュアルを参照)
- セキュリティ関連の改善。EFI(Extensible Firmware Interface)がCLIを使用してセキュアブートを構成可能に(Microsoftによるデスクトップオペレーティングシステム「Windows 11(ゲストOS)」においては、「Virtual TPM(Virtual Trusted Platform Module、仮想TPM)」チップと同様にデフォルトにて有効化)
- MicrosoftによるマルチメディアAPI「DirectX」のVulkan実装であるDXVKをベースとして、3Dグラフィックスを完全に再構築(Vulkanトランスレーション)
- VirtualBoxハイパーバイザー/デバッガーが実験的なGDB(Gnu DeBugger)スタブを提供し、システムレベルの開発者がGDBを使用して、コードをデバッグ可能に(直ぐに構成するためには、CFGMのエクストラデータが必要)
- ホストOSのスクリーンセーバーを無効化するためのオプションを追加(利用可能なプラットフォームにおいてのみ有効なオプション)
- GDB(Gnu DeBugger)を通じたゲストOSのデバッグを試験的にサポート(特にKD/WinDbgを通じたゲストOSのデバッグは、高度に試験的なサポートとなる)
- 負荷を低減してパフォーマンスを最適化するために、内部的な中間エニュメレーションルーチンを最適化
- And many others…
システム要件とApple Siliconホストについて(Apple Siliconホストはテストを継続)
当版におけるシステム要件は、64bitプロセッサーを搭載したApple製コンピューター、Intel版におけるホストOSは「macOS Catalina(macOS 10.15)」「macOS Big Sur(macOS 11)」「macOS Monterey(macOS 12)」となっています。Ver. 6.1にてサポートされていた「macOS High Sierra(macOS 10.13)」「macOS Mojave(macOS 10.14)」は 対象外となりますので御注意下さい。また、既知の問題点を含む その他の詳細が、リリースノート、OTN(Oracle Technology Network)等を通じて確認可能となっています。
macOSホストは、従来までのIntelアーキテクチャー(Intel Mac)に向けたx86バイナリーの他に、ARMベースのSoC(System on a Chip)「Apple Silicon(Apple M1、Apple M2 Chip)」に対応したARM64(AArch64)バイナリーもBeta版が提供されていましたが、同版はGA版としてのリリースには至っていません。
現時点におけるARM64ビルドは殆ど何もエミュレートしておらず、パフォーマンスも非常に低速です。QEMUのような再コンパイルは行われず、ARM仮想化もありません。現実的には、Apple Silicon Macで起動するGUIクライアント(VirtualBox.app)がビルドされているのみといった初期的なサポートに止まっており、引き続きテストリリースが継続されます(現在は、「Beta 4」との位置付けにて「Developer preview for macOS / Arm64 (M1/M2) hosts」が提供されています)。
macOSホストは「Universal 2 Binary」ではなく、各アーテクチャーに向けたバイナリー(OSX.dmg、macOSAArch64.dmg)が個別に提供される事となり、Apple Silicon版における対応ホストOSは「macOS Big Sur(macOS 11)」「macOS Monterey(macOS 12)」となっています。
ダークモードの対応について
当版より、GUIクライアント(Oracle VM VirtualBox Manager(Oracle VM VirtualBoxマネージャ))がダークモードをサポートしました。これはCSSのメディアクエリー「prefers-color-scheme」のように、ホストシステムのアピアランスに合わせて、ライトモードとダークモードが非同期にて切り替わります。
「Oracle VM VirtualBox 7.0.0」におけるダークモード。ホストシステムのアピアランスに合わせて、ライトモードとダークモードが非同期にて切り替わります
「macOS Ventura(macOS 13)」の対応について
現時点で、Appleによる次世代デスクトップオペレーティングシステム「macOS Ventura(macOS 13)」に対する対応について、公式なアナウンスはありません。ユーザーマニュアルにおけるサポート対象ゲストOS、ホストOSにも、同版はリストされていません。
「VirtualBox 6.1.40」リリース
その他にもOracleからは、米国時間2022年10月11日付にて旧版(Ver. 6.1)を対象としたアップデートリリースに相当する「Oracle VM VirtualBox 6.1.40 Build 154048(Oracle VM VirtualBox 6 Update 1 Hotfix 40)」もリリースされ、「Linux kernel 6.0」、及びDebianカーネルを対象とした、Guest Additions関連の追加の修正等が行われています。