事前にX(Twitter)の「@macosxlib」からもアナウンスしていましたが、米Broadcom傘下のVMware, Inc.より米国時間2023年10月19日、macOSベースのデスクトップ仮想化ソフトウェア「VMware Fusion」のアップデートリリースに相当する「VMware Fusion 13.5.0 Pro Build 22583790(GA版)」がリリースされ、VMwareによる公式ダウンロードページを通じて、日本語含む複数言語リソースを包含する マルチリンガル版のバイナリーパッケージが入手可能となっています(x86-64、ARM64両アーキテクチャーにおいてネイティブ実行可能な「Universal 2 Binary」としてビルドされており、「VMware Fusion 13」からは 無償にてアップデート可能となっています)。
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「Windows 11」のインストールを簡略化した「Get Windows」を実装
コードネーム「LK-99」として開発が進められ、事前にプロダクトラインマネージャーのMichael Roy(@mikeroySoft)氏からGAリリースの予告が行われていた当版は、Tech Previewチャンネルの成果がStableチャンネルにマージされた形となっており、一連のテストリリースを通じた主な特徴として、以下の項目等が示されています(「VMware Fusion 13.0.2」からの主な変更点となりますして、以下の項目等が示されています。)。
「Windows 11」のインストールを簡略化した「Get Windows」
「Windows 11」のISOを入手する事は、容易とは言い難い現状である事を開発サイドでは認識しています。その課題に対するソリューションとして、Windows OSをダウンロードするだけでなく、仮想マシンにてネットワークとグラフィックスをサポートするために必要なドライバーを自動的に追加する「Get Windows」ツールが実装されました。このプロセスでは、「New Virtual Machine Assistant(新規仮想マシンアシスタント)」>「Get Windows(Windowsを入手)」から「Windows 11」を選択した後に、エディションと言語を選択するだけで、最新の「 Windows 11」イメージを Microsoftから直接ダウンロードして自動的にインストールされます。
この機能にはダウンロードのレジューム(再開)機能も組み込まれており、ダウンロードが中断された場合においても最初からダウンロードし直す必要はなく、当該時点から中断されたダウンロードを再開する事が可能となっています。この成果によって、「Windows 11」の適切なISOイメージを探す時間と手間が省略され、Windows(ゲストOS)を迅速に起動して実行するための合理化されたパスが提供される事となリマした。尚、一度ダウンロードしたISOファイルは、何度でも利用する事が可能となっています。
「Windows 11 on ARM」において「DirectX 11」をサポート
Intel Macにおいてのみサポートされていた MicrosoftによるマルチメディアAPI「DirectX 11」が、Apple siliconアーキテクチャーにおける「Windows 11 on ARM(ゲストOS)」においてフルサポートされ、グラフィックスパフォーマンスが新たなレベルへと引き上げられました。
これには、エミュレートされた32bit、64bitゲームアプリケーションの実行も含まれ、ARMベースのSoC(System on a Chip)「Apple Silicon(Apple M1、Apple M2 Mac)」をホストシステムとする環境において、ユーザーインターフェイスのレスポンスが大幅に向上されます。
Apple siliconホストにおける「VMware Tools」の対応を強化
Apple siliconホストにおいて実行される「Windows 11 on ARM(ゲストOS)」に向けて、ゲストOS拡張機能「VMware Tools」の対応が強化され、Intel Macの「Windows 11(ゲストOS)」においてサポートされていた機能の大部分が新規にサポートされました。これには「macOS Sonoma(macOS 14)」のVirtualization.framework(Virtualizationフレームワーク)においてサポートされるホストOS(macOS)、ゲストOS(Windows 11)間におけるドラッグアンドドロップ、クリップボード共有が含まれる他、コンソールウインドウのサイズに合わせて ゲストOSの解像度を動的に調整可能なダイナミックレゾリューションもサポートされます。
セキュリティとコントロールの強化
セキュリティは引き続き「VMware Fusion」の中心であるとの考えに基づいて、「VMware Fusion 13.5(LK-99)」ではセキュリティの強化が行われ、パフォーマンスのオーバーヘッドを低減しながら最大限のプロテクトを実現するための、改良された暗号化スキームが導入されています。
この機能強化では、CBC(Cipher Block Chaining)モードではなく、XTS(XEX encryption mode with tweak and ciphertext stealing)モードの暗号化が採用されました。共通鍵暗号アルゴリズムの一つである「XTS-AES 128」は、macOSにおける「FileVault 2」、Windowsにおける「BitLocker Drive Encryption」においても採用されてる強固な暗号アルゴリズムの一つとなります。
尚、CBC(Cipher Block Chaining)モードで暗号化された仮想マシン(「Windows 11」の「TPM(Trusted Platform Module)」を実装した仮想マシン等)は、起動時にXTS(XEX encryption mode with tweak and ciphertext stealing)モードにアップグレードするよう、求められる事となります。
新しいスキームは「VMware Fusion 13.5(LK-99)」においてのみ利用可能となっており、後方互換性(下位互換性)は考慮されていない事に注意して下さい。コンバートに関して問題は確認されていませんが、アップグレードを実行する前に仮想マシンのフルバックアップ、或いはクローンを作成する事を推奨します。このプロセスでエラーが発生した場合には、コミュニティを通じて迅速に報告して下さい。
運用の観点では、SwaggerベースのRESTフルなAPIインターフェイス「Fusion REST API(Fusion Representational State Transfer Application Programming Interface)」における「vmrest」、及びコマンドラインユーティリティ「vmrun」も拡張され、双方において暗号化された仮想マシン、及び「Virtual TPM(Virtual Trusted Platform Module、仮想TPM)」を備えた仮想マシンもサポートされました。
この機能の更なる詳細は、VMwareのナレッジベースで確認する事ができます。
仮想マシンのハードウェアバージョンについて
「VMware Fusion 13.5(LK-99)」では、新規仮想マシン作成時におけるデフォルトの仮想ハードウェアのバージョンが「21」にアップグレードされていますが、このバージョン(virtualHW.version = “21”)が適用された仮想マシンは、旧版の「VMware Fusion」とは互換性がありません。特に旧版で作成した仮想マシンをアップグレードする場合には御注意下さい。仮想マシンのハードウェアバージョンは、セッティングエディタを通じたGUIにて確認可能となっています(「Other(その他)」>「Compatibility(互換性)」。バージョンの変更は、仮想マシンが電源オフの状態にて行なう必要があります)。
Apple Silicon on Intel、Intel on Apple Siliconといった、アーキテクチャーをクロスしてのゲストOSの実行には対応しない
GUIクライアント(VMware Fusion.app)を含むアプリケーション全体は、Intel、Apple Silicon(Apple M1、Apple M2)の両アーキテクチャーにおいてネイティブ実行可能な「Universal 2 Binary」としてビルドされていますが、アーキテクチャーをクロスしてのゲストOSの実行(例えばIntelホストにおけるARM(ゲストOS)の実行、Apple SiliconホストにおけるIntel x86_64(ゲストOS)の実行)には対応していません。
「macOS Big Sur(macOS 11.0)」以降において実装されているバイナリートランスレーター「Rosetta 2」では、Kernel Extension(カーネル拡張)、及びx86-64ベースの仮想マシン、仮想化ソフトウェアはサポートされない事からも、エミュレーターとしての機能(命令セットのエミュレーション)を提供しないと伝えられている現状では、Intel Macに向けた これまでの「VMware Fusion」にて作成されたx86-64ベースの仮想マシン(ゲストOS)は、Apple Silicon(Apple M1、Apple M2)ホストの「VMware Fusion」では動作しないと結論付けて良いでしょう(Apple Siliconを搭載したMacにおいては、必要なエンジニアリング作業とビジネス価値のバランスを考慮して、x86ベースのゲストOSのインストール、実行をサポートする計画はないと伝えられています)。
「VMware Fusion Player」の個人利用は、引き続き無償にて利用可能。Pro版は「VMware Workstation Pro」も利用可能
「VMware Fusion 12」よりライセンスに大きな変更が行われ、従来までのStandard版が廃止され、代わりに新規の商用ライセンス149ドル(アップグレードライセンス79ドル)の「VMware Fusion Player」がラインアップされています。この「VMware Fusion Player」は、個人利用に限り無料にて利用可能となっており、機能的には スナップショットやコンテナ等、現在のStandard版にて提供されている機能が、そのまま引き継がれます。
上位版の「VMware Fusion Pro」も引き続き提供され、こちらは新規ライセンス199ドル(アップグレードライセンス99ドル)に設定され、単一のシリアルにて「VMware Fusion Pro」「VMware Workstation Pro」の何れかを3台のコンピュターにまでインストールして実行する事が可能となっています(今後は、Intel版のWindows(ゲストOS)を実行する環境としても、活用する事ができるでしょう)。
システム要件について
「VMware Fusion 13.5(LK-99)」におけるシステム要件は、64bitプロセッサーを搭載したApple製コンピューター、ホストOSは「macOS Monterey(macOS 12)」以降(「macOS Sonoma(macOS 14)」を含む)となっています。「VMware Fusion 12」にてサポートされていた「macOS Big Sur(macOS 11)」は 対象外となりますので御注意下さい(ゲストOSとしてのmacOSのサポートも「12」〜「14」となります)。また、既知の問題点を含む その他の詳細が、リリースノート、VMTN(VMware Technology Network)等を通じて確認可能となっています。