「VMware Fusion 12」発表、「macOS Big Sur」をサポートし、Playerは無償提供へ

Dell TechnologiesグループのVMwareより米国時間2020年8月20日、プレスリリース、VMware Fusion Blog(公式ブログ)を通じて、macOS(OS X)ベースのデスクトップ仮想化ソフトウェア「VMware Fusion」のアップグレードリリースに相当する「VMware Fusion 12」のリリース予定、機能概要等がアナウンスされています。

Hypervisor APIに対応し、eGPUもサポート

米国時間2007年8月6日にVer. 1.0がGAリリースを迎えて以来、今年で13周年を迎える「VMware Fusion」は、アップグレードに相当するVer. 12としてリリースされる事となりました。

当版では、定期的にリリースされていたTech Previewチャンネルの成果がStableチャンネルにマージされ、Appleによる次世代デスクトップオペレーティングシステム「macOS Big Sur 11.0」を ゲストOS、ホストOSとしてサポートし、ゲストOSとしては APFS(Apple File System)が適用されたリカバリーパーティションからのインストールにも対応します。

また、「macOS Big Sur 11.0」では macOSの最深層に大きな変更が加えられているため、当版ではハイパーバイザースタックを再構築し、macOSが提供するネイティブのハイパーバイザー「Hypervisor API」に対応します。これにより、ホストOSが「macOS Big Sur 11.0」の環境において、サードパーティー(この場合はVMware)によるカーネル拡張(.kext)が完全に廃止される事となり、より安全に 仮想マシン、コンテナー、Kubernetesクラスター等を実行可能とします(ホストOSが「macOS Catalina 10.15」の環境においては、従来までと同様のアプローチにて、VMwareによるカーネル拡張が使用される事となります)。

デバイス関連では、GUIクライアント(VMware Fusion.app)におけるセッティングエディタを通じて、仮想マシン毎に ホストコンピューター(Mac)に接続された外部GPUを選択する事が可能となりました。この改善によって、「AMD Radeon 5700」を搭載したeGPUを使用して、MacBook Airのビルトインのディスプレイにおいて、Windows(ゲストOS)に向けた「DirectX 11(Direct3D 11)」グラフィックスをレンダリングする事等が可能となった他、仮想マシンにおいて「USB 3.1 SuperSpeed Plus」コントローラーがサポートされます。

主として開発者に向けて新たに実装されるKubernetesクラスターでは、コンテナーエンジンを対象としたCLI(Command Line Interface、コマンドラインインターフェイス)「vctl」が追加される事となり、同CLIでは「vctllogin」を実行する事によって、イメージのプル毎に完全なURLパスを入力する事なく、リモートコンテーナレジストリに永続的にログインする事が可能となります。

vctlには、「kind」をサポートするKubernetesクラスターをデプロイするための新機能も含まれており、「kind」自体を変更する事なく、接続する種類の「docker compatible(docker互換)」ソケットを公開する事が可能となっています。

その他では、3Dグラフィックスのアクセラレーションが強化され、Windows(ゲストOS)を対象としてに「DirectX 11(Direct3D 11)」がサポートされた他、ローカルのKubernetesクラスターを実行するための「KIND」ツールがサポートされ、Dockerコンテナをノードとして使用可能になります(この機能は、同時にリリース予定の「VMware Workstation 16」に向けても提供される予定となっています)。

デスクトップハイパーバイザー製品ラインのライセンスが変更され、「VMware Fusion Player」の個人利用は無償にて利用可能。Pro版は「VMware Workstation Pro」も利用可能

当版では、ライセンスに大きな変更が行われ、従来までのStandard版が廃止され、代わりに新規の商用ライセンス149ドル(アップグレード79ドル)の「VMware Fusion Player」がラインアップされています。この「VMware Fusion 12 Player」は、個人利用に限り無料にて利用可能となっており、機能的には スナップショットやコンテナ等、現在のStandard版にて提供されている機能が、そのまま引き継がれます。

上位版の「VMware Fusion Pro」も引き続き提供され、こちらは新規ライセンス199ドル(アップグレード99ドル)に設定され、単一のシリアルにて「VMware Fusion Pro」「VMware Workstation Pro(Windows/Linux)」の何れかを3台のコンピュターにまでインストールして実行する事が可能となっています(MacがApple Siliconに移行した後には、Intel版のWindows、Linux(ゲストOS)を実行する環境としても、活用する事ができるでしょう)。

尚、「macOS Big Sur 11.0」が発表された2020年6月15日以降に「VMware Fusion 11.5(Standard/Pro)」を購入したユーザーには、「VMware Fusion 12(Standard/Pro)」のアップグレードライセンスが無料にて提供され、GA版は 四半期の決算が発表される2020年10月30日頃に、「VMware Workstation 16」と共にリリース予定と伝えられています。