VMware Fusion、Apple Silicon(Apple M1) 対応に向けてTech Previewを公開へ

VMware, Inc.より米国時間2021年4月27日、VMware Fusion Blog(公式ブログ)を通じて、macOS(OS X)ベースのデスクトップ仮想化ソフトウェア「VMware Fusion」「VMware Fusion Player」の Apple Silicon(Apple M1)に対する対応予定、機能概要、進捗状況等がアナウンスされています。

Linux(ゲストOS)の実行を最優先に

米国時間2007年8月6日にVer. 1.0がGAリリースを迎えて以来、14年目を迎える「VMware Fusion」の2021年は、ARMベースのSoC(System on a Chip)「Apple Silicon」への対応に取り組みます。

同SoCにおいて仮想マシンを実行するためには、未だ相当数の課題と未了のタスクが残されている現状ではあるものの、開発は順調に進捗しており、年内にTech Previewチャンネルからプレビュー版を公開する予定が組まれているとの事。以下に伝えられている現状を要約します。

  • Apple Siliconを搭載したMacにおいては、必要なエンジニアリング作業とビジネス価値のバランスを考慮して、x86ベースのゲストOSのインストール、実行をサポートする計画はない
  • Microsoftは現在、WoA(Windows On ARM)を仮想マシンでの実行に向けてはライセンスしていないため、Windows(ゲストOS)のプライオリティは、Linux(ゲストOS)に次ぐ2番目と位置付けている
  • macOS(ゲストOS)の仮想マシンにおいての実行は、短期的にはサポート対象の範囲外である(Appleと協力して解決すべき課題がある)

「macOS Big Sur 11.0」において実装されているバイナリトランスレーター「Rosetta 2」では、Kernel Extension(カーネル拡張)、及びx86-64ベースの仮想マシン、仮想化ソフトウェアはサポートされない伝えられている事から、エミュレーターとしての機能(命令セットのエミュレーション)を提供しないと伝えられている現状では、Intel Macに向けた これまでの「VMware Fusion」にて作成されたx86-64ベースの仮想マシン(ゲストOS)は、現在開発中の「VMware Fusion(with Apple M1 chip)」では動作しないと結論付けて良いでしょう。

「ESXi Arm Edition」をベースに、スケーラブルな仮想マシンを展開

VMware Flingsにて開発が進められている「ESXi Arm Edition」で培ったノウハウを有効に活用し、コードと機能のエコシステムとの互換性を維持しながら、両プロジェクトのコアを統合している「VMware Fusion(with Apple M1 chip)」では、省電力性とパフォーマンスにおいて大きな進歩を遂げていると伝えられています(エンタープライズグレードとして設計されているベアメタルハイパーバイザー「VMware ESXi」との関係により、競合他社よりもアーキテクチャー上で大きなアドバンテージ(セキュリティ、復元力、パフォーマンスのメリット等)を有するとの事)。

具体的な成果として、社内のラボ(MacBook Air M1, 2020)において、8CPU、8GPUコア、16GBのRAM容量を割り当てた仮想マシンにて「Ubuntu 21.04(Hirsute Hippo)」をゲストOSとして実行している様子が報告されています。

この環境では その他にも、「Fedora 34」を含む7基の仮想マシン(Linux(ゲストOS))が同時に実行されており、それでもIntelベースのMac miniよりも、約20度(摂氏)程度低い内部温度で動作していると伝えられています。

open-vm-toolsのARM版(aarch64)は時期尚早

現時点で、Linux(ゲストOS)に向けた「VMware Tools」のオープンソース実装「open-vm-tools」 のARM(aarch64)プラットフォーム版は提供されていません。従って、Intelベースの環境では提供されている、ゲストOS拡張機能をインストールする事によって齎される諸機能(3Dグラフィックスに向けたアクセラレーション、タイムシンクロナイズ、ダイナミックレゾリューション(フルスクリーンモードを含む)、ホストOS、ゲストOS間におけるテキストのコピーアンドペースト、及びファイルのドラッグアンドドロップ等)を利用する事ができないのが現状です(ESXi-Armプロジェクトでは、ユーザーがソースからバイナリーをビルドしているのが現状です)。

この状況を改善するために、種々のLinuxアップストリームプロジェクトと協力して、open-vm-toolsをサポートするために必要なカーネルパッチを構築している状況であると伝えられています。

WoA(Windows On ARM)の仮想マシンでの実行は?

WoA(Windows On ARM)の仮想マシンでの実行は、技術的に可能であっても製品構成、及びライセンスの壁が実現を阻む事となるかも知れません。これが製版版ではなく、インサイダープレビュー(Windows 10 on ARM Insider Preview)であっても、ライセンス版の「Windows 10」を搭載したシステムにのみ(ゲストOSとして)インストールする事が可能と解釈する事ができます(つまり、ARM64をゲストOSとして実行可能と許諾しているハードウェアのリストにApple Siliconが含まれていないため、インサイダープレビューでも、Apple製コンピューターでの実行はグレーゾーンではないか?)。

尚、WoA(Windows On ARM64)をゲストOSとして実行可能なデバイスとしては「Microsoft SQ1」「Microsoft SQ2」「Qualcomm Snapdragon 8cx」「Qualcomm Snapdragon 850」が明記されており、このリストに「Apple M1」は含まれていません。この件に関しては現在、Microsoftに確認中であると伝えられています。

Intel Macで作成した仮想マシン(ゲストOS)はどうなる?

冒頭にも記しましたが、「macOS Big Sur 11.0」において実装されているバイナリートランスレーター「Rosetta 2」では、Kernel Extension(カーネル拡張)、及びx86-64ベースの仮想マシン、仮想化ソフトウェアはサポートされない伝えられている事から、エミュレーターとしての機能(命令セットのエミュレーション)が提供されない限り、Intel Macに向けた これまでの「VMware Fusion」にて作成されたx86-64ベースの仮想マシン(ゲストOS)は、現在開発中の「VMware Fusion(with Apple M1 chip)」では動作しないと結論付けて良いでしょう。

x86-64命令セットアーキテクチャーのエミュレーションに関しては、(当面は)必要なエンジニアリング作業に比べてビジネス価値がそれほど高くないと判断されるため、現時点では この機能に開発リソースを割く予定はないと伝えられています(Apple SiliconにおいてARM版のLinux(ゲストOS)を快適に利用可能とする事に焦点を当てているとの事)。

2021年内にTech Previewをリリースへ。亀のように堅実な歩みを

タイムラインとしては、2021年内にTech Previewチャンネルからプレビュー版ををリリースする事を目標として定めており、ETAはVMTN(VMware Technology Network)か公式Twitter(@VMwareFusion)から案内するとの事です。

プロダクトラインマネージャーのMichael Roy(@mikeroySoft)氏は、ベアメタルハイパーバイザー「VMware ESXi」との相互運用性を重要視しており、この分野で一種の製品ラインのみを提供している競合他社と 開発スピードて競い合うつもりはないと発言しています。つまり「最初」には拘らず、「ウサギとカメ(兎と亀)」の寓話の「カメ」のように、堅実な進歩を遂げて行きたいとの意向を示しています。

尚、ホステッドUIのQAエンジニアリングチームが活動するインドでは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の深刻な被害を受けています。VMwareによる回復基金も御検討下さい(これは、このサイトの運営者である私の見解ではありません)。