「VMware Fusion Tech Preview 2023」リリース、Apple silicon Macにおいて「DirectX 11」をサポート

米Broadcom傘下のVMware, Inc.より米国時間2023年7月13日、開発過程にある 次世代デスクトップ仮想化ソフトウェア「VMware Fusion Tech Preview(for macOS)」の最新プレビュー版(パブリックベータ「Fusion 2023 TP」)に相当する「VMware Fusion Tech Preview 2023(e.x.p. 22068932 July.)」がリリースされ、現在VMwareによる公式ダウンロードページを通じて、日本語含む複数言語リソースを包含する マルチリンガル版のバイナリーパッケージが入手可能となっています(当版は、現時点では開発過程にあるプレビュー版に相当します。何れの機能も正式なサポートを受ける事はできませんので、試用する場合には御注意下さい。バージョン表記は、現時点では暫定的に付されているものです。今後の開発過程において、正式なバージョン番号が付与されます)。

「VMware Fusion 14」に向けたスニークピーク(sneak peek)

次世代版のテスト、評価等を主目的としたプレビュー版として位置付けられている当版では、機能の追加、全般的な安定性改善、パフォーマンス改善、バグフィックス、セキュリティアップデート等が行われており、前版(VMware Fusion 13.0.2)からの主な変更点として、以下の項目等が示されています。

「Windows 11 on ARM」において「DirectX 11」をサポート

Intel Macにおいてのみサポートされていた MicrosoftによるマルチメディアAPI「DirectX 11」が、Apple siliconアーキテクチャーにおける「Windows 11 on ARM(ゲストOS)」においてフルサポートされ、グラフィックスパフォーマンスが新たなレベルへと引き上げられました。

これには、エミュレートされた32bit、64bitゲームアプリケーションの実行も含まれ、ARMベースのSoC(System on a Chip)「Apple Silicon(Apple M1、Apple M2 Mac)」をホストシステムとする環境において、ユーザーインターフェイスのレスポンスが大幅に向上されます。

Apple siliconホストにおける「VMware Tools」の対応を強化

Apple siliconホストにおいて実行される「Windows 11 on ARM(ゲストOS)」に向けて、ゲストOS拡張機能「VMware Tools」の対応が強化され、Intel Macの「Windows 11(ゲストOS)」においてサポートされていた機能の大部分が新規にサポートされました。これには「macOS Sonoma(macOS 14)」のVirtualization.framework(Virtualizationフレームワーク)においてサポートされるホストOS(macOS)、ゲストOS(Windows 11)間におけるドラッグアンドドロップ、クリップボード共有が含まれる他、コンソールウインドウのサイズに合わせて ゲストOSの解像度を動的に調整可能なダイナミックレゾリューションもサポートされます。

セキュリティとコントロールの強化

セキュリティは引き続き「VMware Fusion」の中心であるとの考えに基づいて、「VMware Fusion Tech Preview 2023」ではセキュリティの強化が行われ、パフォーマンスのオーバーヘッドを低減しながら最大限のプロテクトを実現するための、改良された暗号化スキームが導入されています。

この機能強化では、CBC(Cipher Block Chaining)モードではなく、XTS(XEX encryption mode with tweak and ciphertext stealing)モードの暗号化が採用されました。共通鍵暗号アルゴリズムの一つである「XTS-AES 128」は、macOSにおける「FileVault 2」、Windowsにおける「BitLocker Drive Encryption」においても採用されてる強固な暗号アルゴリズムの一つとなります。

尚、CBC(Cipher Block Chaining)モードで暗号化された仮想マシン(「Windows 11」の「TPM(Trusted Platform Module)」を実装した仮想マシン等)は、起動時にXTS(XEX encryption mode with tweak and ciphertext stealing)モードにアップグレードするよう、求められる事となります。

新しいスキームは「VMware Fusion Tech Preview 2023」においてのみ利用可能となっており、後方互換性(下位互換性)は考慮されていない事に注意して下さい。コンバートに関して問題は確認されていませんが、アップグレードを実行する前に仮想マシンのフルバックアップ、或いはクローンを作成する事を推奨します。このプロセスでエラーが発生した場合には、コミュニティを通じて迅速に報告して下さい。

運用の観点では、SwaggerベースのRESTフルなAPIインターフェイス「Fusion REST API(Fusion Representational State Transfer Application Programming Interface)」における「vmrest」、及びコマンドラインユーティリティ「vmrun」も拡張され、双方において暗号化された仮想マシン、及び「Virtual TPM(Virtual Trusted Platform Module、仮想TPM)」を備えた仮想マシンもサポートされました。

この機能の更なる詳細は、仮想マシンのハードウェアバージョンについて

「VMware Fusion Tech Preview 2023」では、新規仮想マシン作成時におけるデフォルトの仮想ハードウェアのバージョンが「21」にアップグレードされていますが、このバージョン(virtualHW.version = “21”)が適用された仮想マシンは、旧版の「VMware Fusion」とは互換性がありません。特に旧版で作成した仮想マシンをアップグレードする場合には御注意下さい。仮想マシンのハードウェアバージョンは、セッティングエディタを通じたGUIにて確認可能となっています(「Other(その他)」>「Compatibility(互換性)」。バージョンの変更は、仮想マシンが電源オフの状態にて行なう必要があります)。

機能強化はこれらに留まらず、更なるイノベーションを提供予定

上記の改善は、今後数か月以内に予定されているスニークピーク(sneak peek)の一部に過ぎず、2023年に「VMware Fusion」が提供予定とする機能はこれに留まりません。「VMware Fusion Tech Preview 2023」には含まれていない、更に幾つかのエキサイティングでイノベーティブな機能と改善点がパイプラインに用意されていますので、皆様からのフィードバックをお待ちしております。フィードバックによって、バグの一つや二つを解決できるかも知れません。

「VMware Fusion」の可能性を限界までを押し広げていくために、開発に尽力しております。今後もエキサイティングなアップデートをご期待ください。

Apple Silicon on Intel、Intel on Apple Siliconといった、アーキテクチャーをクロスしてのゲストOSの実行には対応しない

GUIクライアント(VMware Fusion.app)を含むアプリケーション全体は、Intel、Apple Silicon(Apple M1、Apple M2)の両アーキテクチャーにおいてネイティブ実行可能な「Universal 2 Binary」としてビルドされていますが、アーキテクチャーをクロスしてのゲストOSの実行(例えばIntelホストにおけるARM(ゲストOS)の実行、Apple SiliconホストにおけるIntel x86_64(ゲストOS)の実行)には対応していません。

「macOS Big Sur(macOS 11.0)」以降において実装されているバイナリートランスレーター「Rosetta 2」では、Kernel Extension(カーネル拡張)、及びx86-64ベースの仮想マシン、仮想化ソフトウェアはサポートされない事からも、エミュレーターとしての機能(命令セットのエミュレーション)を提供しないと伝えられている現状では、Intel Macに向けた これまでの「VMware Fusion」にて作成されたx86-64ベースの仮想マシン(ゲストOS)は、Apple Silicon(Apple M1、Apple M2)ホストの「VMware Fusion」では動作しないと結論付けて良いでしょう(Apple Siliconを搭載したMacにおいては、必要なエンジニアリング作業とビジネス価値のバランスを考慮して、x86ベースのゲストOSのインストール、実行をサポートする計画はないと伝えられています)。

この度リリースされたTech Previewは、プレビュー用のライセンスが認証された状態で提供されているので、新たにシリアルナンバー等を入手する必要はありません。期間限定のプレビュー版ではありますが、フリーウェアの様な感じで試用する事ができます(別途に、VMTN(VMware Technology Network)のアカウントが必要となります)。

現時点でシステム要件は明記されていない

また、現時点でシステム要件は明記されていませんが、「macOS Monterey(macOS 12、ホストOS)」で起動する事は確認しました。ただ、近年の「VMware Fusion」は、ホストOSとして現行版を含む2世代分しかサポートしていないので、「macOS Sonoma(macOS 14)」がGA版としてリリースされた後には、「macOS Ventura(macOS 13)」以降と定義される可能性があります。