Oracle Corporationより米国時間2017年7月18日、マルチプラットフォームに対応するオープンソースのデスクトップ仮想化ソフトウェア「Oracle VM VirtualBox」のアップデートリリースに相当する「Oracle VM VirtualBox 5.1.24 Build 117012(Oracle VM VirtualBox 5 Update 1 Hotfix 24)」がリリースされ、プロジェクトサイト、及びOracleによる公式ダウンロードページを通じて、macOS(OS X)、Windows、Linux、Solarisを対象としたバイナリーパッケージ、ソースコード、SDK(Software Development Kit)、PUEL(VirtualBox Personal Use and Evaluation License)に準拠したエクステンションパック(Oracle VM VirtualBox Extension Pack)が入手可能となっています(バイナリーとソースコードには、ライセンスとしてGPLv2(GNU General Public License Version 2)が適用されています。尚、Linuxホストにおいて「VirtualBox」のリポジトリーを利用しているユーザーは、「Software Updater(ソフトウェアの更新)」からもアップデート可能となっています)。
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「Windows 10 Creators Update」との互換性も改善
「VirtualBox 5.1」を対象としたメンテナンスアップデートとして位置付けられている「VirtualBox 5.1.24」では、全般的な安定性改善、パフォーマンス改善、バグフィックス、セキュリティアップデート等が行われており、「VirtualBox 5.1.22」からの主な変更点として、以下の項目等が示されています。
- 一部特定のゲストOS(「Windows XP」等)を適切に動作させるために、AMD RyzenプロセッサーにおけるVME CPUID機能をマスク
- 「SSE2(Streaming SIMD Extensions 2)」命令のエミュレーションを改善
- リアルモード割り込みをディスパッチする場合に、TFフラグ、ACフラグが適切にクリアされるべくした改善を適用
- ユーザーインターフェイス(GUI)関連の改善。KDE Plasma(ホストOS)の最新版にてフルスクリーンモードモードを利用した場合に、ミニツールバーが適切に動作しなかった問題を修正
- 複数のスクリーンで設定された仮想マシンが、フルスクリーンモード、Samless(シームレス)モードで動作し、且つホストスクリーンが除去された場合(例えばRDP(Remote Desktop Protocol)経由でホストに接続されている場合等)に、クラッシュするケースが確認されていた問題を修正
- コンソールウインドウのサイズと位置が、次回起動時にリストアされないケースが確認されていた問題を修正(ホストOSが「Debian 8」の場合等)
- 一部特定状況下のマルチモニター構成において、リブート時に画面の更新の停止、或いはブラックスクリーンの表示がなされなくなるべくした修正を適用
- 「Windows 10(ゲストOS)」を対象として、多数のオーディオ、サウンド関連の改善を適用(「Windows 10 Anniversary Update」にて発生し得たサウンドのクラッキング等)
- ストレージ関連の改善。IntelによるSPDK(Storage Performance Development Kit)を使用した場合に、クラッシュするケースが確認されていた問題を修正
- API関連の改善。例えば仮想マシングループの作成時、グループの解除時等に仮想マシングループの名称が変更された場合にも、スナップショットノードの適切なファイル名が使用されるべくした措置を適用
- 仮想マシンのパワーオン(電源投入)に失敗した場合に、適切なエラーコードが返されるべくした改善を適用
- メディアが再配置された場合に、ターゲットパスが再配置に追従している事を確認すべくした変更を適用
- 仮想マシンの設定においてビデオ録画の設定が有効化されている場合においても、仮想マシンの起動時にビデオ録画が自動的に開始されなかった問題を修正
- EFI(Extensible Firmware Interface)による制限に因して、同ファームウェアインターフェイスを有効化しつつ、仮想マシンに対して3504MB以上のRAM容量を割り当てた仮想マシンを起動した場合に、ブラックスクリーンが発生し、当該の仮想マシンを起動する事ができなかった問題を修正
- ホストオンリーアダプターの改善。Windowsホスト(Windows 10)において、IPv4(Internet Protocol Version 4)ネットマスクを適切に決定する事ができなかった問題を修正
- NAT(Network Address Translation)ネットワークの改善。アダプターのネットワーク接続タイプがNATネットワーク以外である状況でNAT(Network Address Translation)ネットワークが変更された場合に、NAT/DHCPサービスの開始/停止の参照カウントが適切に実行されるべくした改善を適用
- コマンドラインユーティリティ「VBoxManage」関連の改善。ソースコードのtypo(typographic error)に起因した「controlvm videocapfile」コマンドにおけるバグを修正
- Microsoftによるデスクトップオペレーティングシステム「Windows 10 Creators Update(version 1703、Insider Build 16237.1001)」において、GUIクライアント(Oracle VM VirtualBox Manager(Oracle VM VirtualBoxマネージャ))を起動する事ができないケースが確認されていた問題を修正(Windowsホスト)
- ドライバー検証機能(Driver Verifier)が有効になっている場合に、「VBoxNetAdp6.sys」によってクラッシュが引き起こされ得た問題を修正(Windowsホスト)
- macOSホスト、Linuxホストにおいて、共有ライブラリーの読み込み時に発生していた幾つかの問題(仮想マシンを適切に起動する事ができないケースが確認されていた問題、グラフィックスライブラリが検出されず、プロセスも終了しなかった問題等)を修正(「VirtualBox 5.1.20」on「iMac(21.5-inch, Mid 2010)」on「Intel Core i3」環境にて発生し得たリグレッション)
- Linux(ホストOS、ゲストOS)の改善。「Linux kernel 4.12」において、ゲストOS拡張機能「Guest Additions」のカーネルモジュールをビルドする事ができなかった問題、及び「Fedora 27(rawhide、ゲストOS)」をインストールする事ができなかった問題を修正
- 「CONFIG_CPUMASK_OFFSTACK」が定義されているLinuxカーネルを対象として、カーネルスタックの消費量を低減
- 「GCC 7(GNU Compiler Collection 7)」にてカーネルモジュールをビルドする事ができず、Slackware(32bit)をインストールする事ができなかった問題を修正
- 「Linux kernel 4.13」において、ゲストOS拡張機能「Guest Additions」をビルドする事ができなかった問題を修正
- Linuxホストの改善(主として「Fedora」)。最新のLinuxディストリビューションでは「net-tools」が非推奨になり、代わりに「iproute」を利用するようになっているため、「VirtualBox 5.1.24」において「net-tools」に依存しなくなるべくした修正が適用された(「Fedora」のRPM(Red Hat Package Manager)において「net-tools」におけるrpmの依存関係を削除)
- 古いLinuxディトリビューションを対象として、2Dビデオアクセラレーションを有効化(「VirtualBox 5.1.0」におけるリグレッション)
- ゲストOS拡張機能「Guest Additions」関連の改善(Linux Additions)。「UEK 4(Unbreakable Enterprise Kernel 4)」を実装する「Oracle Linux 6」を対象として、ダイナミックリサイジング(ダイナミックレゾリューション)をサポート
- 3Dパススルーが有効化された仮想マシンにおいて、「Fedora 25 Alph」「Fedora 26 Alph」を実行可能に
- ディストリビューションでインストールされた追加機能がガイドラインに更新されている場合に、それらを削除する事が非推奨となるべくした変更を適用
- VMM(Virtual Machine Manager、仮想マシンマネージャー)の改善。一部特定のゲストOS(「Windows XP」等)を適切に動作させるために、「AMD Ryzen」プロセッサーにおけるVME CPUID機能をマスク
- エミュレート可能な「SSE2(Streaming SIMD Extensions 2)」命令を追加
- リアルモード割り込みをディスパッチする場合に、「TF(Trap Flag)」「AC(Auxiliary carry Flag)」両フラグが適切にクリアされるべくした改善を適用
- ユーザーインターフェイス(GUI)関連の改善。最新の「KDE Plasma」をデスクトップ環境に採用するLinuxホストにおいて、ミニツールバーが適切に機能していなかった問題を修正
- 複数のスクリーンを割り当てられた仮想マシンがフルスクリーン、Seamless(シームレス)モードで実行されている環境において、ホストのスクリーンが削除された場合 (例えばRDP(Remote Desktop Protocol)経由でホストに接続する場合等) に、当該の仮想マシンがクラッシュするケースが確認されていた問題を修正
- 仮想マシンの再起動後に、ウインドウのサイズと位置がリストアされないケースが確認されていた問題を修正すべくして、レスポンス前に中間サイズを設定するためのゲストOSの初期サイズのヒントを修正
- 一部特定条件下のマルチスクリーン設定において、再起動時に画面の更新が停止したり、ブラックスクリーンが発生し得た問題を修正
- 「Windows 10(ゲストOS)」を対象として、多数のオーディオ関連の改善を適用(サウンドのクラッキング、再生の遅延等)
尚、現時点では公式にサポートされていませんが、自分の環境において「Ubuntu 17.04(Zesty Zapus)」がゲストOSとして実行可能である事を確認しました。ゲストOS拡張機能「Guest Additions」がインストール可能となっており、デスクトップシェルの「Unity」も、3Dグラフィックスのアクセラレーションが有効な状態で動作しています。
システム要件について
「VirtualBox 5.1.24」におけるシステム要件は、64bitプロセッサーを搭載したApple製コンピューター、ホストOSは「OS X Mavericks(OS X 10.9)」「OS X Yosemite(OS X 10.10)」「OS X El Capitan(OS X 10.11)」「macOS Sierra(macOS 10.12)」となっています。「VirtualBox 5.0」にてサポートされていた「OS X Mountain Lion(OS X 10.8)」は、対象外となりますので御注意下さい。また、既知の問題点を含む その他の詳細が、リリースノート、OTN(Oracle Technology Network)等を通じて確認可能となっています。
「VirtualBox 5.1.26」リリース(2017年7月28日に追記)
「VirtualBox 5.1.24」のリリースから9日後と短いスパンではありますが、米国時間2017年7月27日付にて「Oracle VM VirtualBox 5.1.26 Build 117224(Oracle VM VirtualBox 5 Update 1 Hotfix 26)」がリリースされました。
「VirtualBox 5.1」を対象としたメンテナンスアップデートとして位置付けられている「VirtualBox 5.1.26」では、全般的な安定性改善、パフォーマンス改善、バグフィックス、セキュリティアップデート等が行われており、「VirtualBox 5.1.24」からの主な変更点として以下の項目等が示されています。
- VMM(Virtual Machine Manager、仮想マシンマネージャー)の改善。Windowsのバグを回避するために、仮想マシンのリセット時にTSC(Time Stamp Counter、タイムスタンプカウンター)がリセットされるべくした改善を適用
- オーディオ関連の修正。VRDP(VirtualBox Remote Desktop Protocol)接続が有効化されている場合に、メモリーリークが発生するケースが確認されていた問題を修正(「VirtualBox 5.1.24」におけるリグレッション)
- PulseAudioバックエンドを使用している場合に、Linuxホストにおいて大量のサウンドシンクが生成されるケースが確認されていた問題を修正
- AC’97エミュレーションに向けて、録音ゲインレジスタを実装(比較的新しい版のUbuntu(ゲストOS)では、ゲインの制御、及びレコーディング(キャプチャー)レベルのミュートを行う場合に、この機能が利用される)
- ストレージ関連の改善。IntelによるSPDK(Storage Performance Development Kit)にてエミュレートされたNVMe(NVM Express(Non-Volatile Memory Express))コントローラーを使用した場合に、ハングアップするケースが確認されていた問題を修正
- マウス関連の改善。MicrosoftによるPTP(Precision Touchpad)にて、ダブルクリックが適切に機能しなかった問題を修正
- 「ip route」コマンドにて、ホストオンリーネットワークインターフェイスが適切に起動されるべくした改善を適用(Linuxホストにおいてのみ発生し得た問題で、「VirtualBox 5.1.24」におけるリグレッション)
- deb/rpmパッケージに向けて「Python 3」ライブラリーを提供(Linuxホスト)
- Windowsホストにおいて、ブリッジネットワークをインストールする事なく、ホストオンリーネットワークを使用可能に
- 「Windows Vista」以降のWindows(ゲストOS)において、自動ログインが適切に機能しなかった問題を修正(「VirtualBox 5.1.24」におけるリグレッション)
「Linux Mint 18.2(Sonya、ゲストOS)」on「Oracle VM VirtualBox 5.1.26 Build 117224」on「macOS Sierra(macOS 10.12.6(ホストOS))」
「VirtualBox 5.0」系はサポートを終了
「VirtualBox 5.0」系は、米国時間2017年4月28日付にてリリースされた「Oracle VM VirtualBox 5.0.40 Build 114633(Oracle VM VirtualBox 5 Update 0 Hotfix 40)」が最後のリリースとなっています。今後はバグフィックス、セキュリティ修正等のメンテナンスは行われませんので御注意下さい。macOS(ホストOS)に関しては、「OSX Mountain Lion(OSX 10.8)」までのサポートが終了となっています。
現在アクティブに開発が行われているのは「VirtualBox 5.1」、及び現在開発過程にあり、テストリリースが開始されている「VirtualBox 5.2」の2ラインとなります。