「Ubuntu Cinnamon 23.04」を「Parallels Desktop 18」にインストール

CanonicalによるLinuxディストリビューション「Ubuntu 23.04(開発コードネーム「Lunar Lobster」)」が、英国時間2023年4月20日付にてGAリリースを迎え、現在Ubuntu Foundationによる公式ダウンロードページを通じて、x86-64(AMD64)を対象としたisoイメージが入手可能となっています。今回は、同オペレーティングシステムの公式フレーバーとして新たに採用された「Ubuntu Cinnamon 23.04(旧Ubuntu Cinnamon Remix)」を macOS(Mac OS X)ベースのデスクトップ仮想化ソフトウェア「Parallels Desktop 18 for Mac」にゲストOSとしてインストールしてみましたので、そのプロセス等を簡単に纏めてみたいと思います。

デスクトップ環境に「Cinnamon」を採用する公式フレーバー

「Ubuntu Cinnamon 23.04(旧Ubuntu Cinnamon Remix)」では、デフォルトのデスクトップセッションとして「Cinnamon 5.6.7」が採用されています。Linux Mint teamが開発を主導する「Cinnamon」は、「GNOME 3」の代替えを目指して 2011年にGNOMEシェルからフォークされ、当初はデスクトップシェルとして開発が進められていましたが、現地時間2013年10月10日付にてリリースされた「Cinnamon 2.0」より、独立したデスクトップ環境の一つとして構築されています。

Ubuntuベースのディストリビューションでは、これまで「Ubuntu Cinnamon Remix」として開発が継続されてきましたが、この度リリースされた「Ubuntu 23.04(Lunar Lobster)」より、正式に公式フレーバーとして承認されています。

尚、「Cinnamon」では グラフィックスアクセラレーション(OpenGL等の3Dグラフィックス)が要求される事となりますので、「Virtual Machine Configuration(仮想マシン構成)」>「Hardware(ハードウェア)」>「Graphics(グラフィックス)」>「Advanced(詳細設定)」ペインから、3Dグラフィックスのアクセラレーションを有効化する必要があります(デフォルトで有効化されているので、そのまま使用して下さい)。

インストール先の空きディスク容量に注意

「Parallels Desktop for Mac」では、Linux(ゲストOS)を対象とした自動インストール機能「Linux Express Installation(Linux簡易インストール)」オプションが実装されている他、「New Virtual Machine Assistant(新規仮想マシンアシスタント)」を通じて、プリセット済みの仮想アプライアンスをダウンロードする事も可能となっていますが、当ポストでは、インストーラーを通じたマニュアルインストールを実践しています。

マニュアルインストールでは、ゲストOSのタイプとして「Ubuntu Linux」を選択してブランクの仮想マシンを作成した後に、Live CD(インストールCD)から当該の仮想マシンを起動します。その後、ライブ環境に含まれるインストーラーを起動し、ウィザードに従って インストールオプションやタイムゾーン指定、キーボードレイアウトの選択、及びアカウント設定等を順次に行っていく事となります。

今回は、インストール時のオプションとして「Ubuntu 18.04 LTS(Bionic Beaver)」より新たに追加された「Minimal installation(最小インストール)」構成を選択しています。このオプションは、インストール時に Webブラウザー(Firefox)と基本ユーティリティのみをインストールする事によって、消費されるディスク容量の低減やアップデート時間の短縮等に貢献します(初期状態でインストールされないアプリケーションには、メールクライアントの「Thunderbird」、オフィススイートの「LibreOffice」、メディアプレーヤの「Rhythmbox」、ラスターグラフィックスソフトウェアの「GIMP(GNU Image Manipulation Program)」等が含まれます)。

詳細は後述しますが、「Ubuntu Cinnamon」は中、重量級のディストリビューションに分類されますので、ディスク容量に余裕のない環境(或いはディスク容量を少なく抑えたい環境)では、インストール先の空きディスク容量に注意が必要です。

「Parallels Tools(for Linux)」もインストール可能

「Parallels Desktop 18 for Mac」は、米国時間2023年2月15日付にてリリースされた「Parallels Desktop 18.2.0(現行GA版)」の段階において「Ubuntu 23.04(Lunar Lobster)」をゲストOSとして正式にサポートしていませんが、同梱されているゲストOS拡張機能「Parallels Tools」をカーネルモジュールとして組み込む事が可能です。

※事前に「libelf-dev」「dkms」がインストールされている必要があるので、インストールプロセスにおいて警告が発せられた場合には、パッケージ管理システム「APT(Advanced Packaging Tool)」を通じてインストールします。この場合には、「Terminal(端末)」を通じて以下のコマンドを実行します(要管理者権限)。

sudo apt install libelf-dev
sudo apt install dkms

尚、パッケージ名をスペースで区切る事によって、複数のパッケージを1行のコマンドにてインストールする事も可能です。また、プリインストールされているAPTのGUIフロントエンド「Synaptic Package Manager(Synapticパッケージマネージャー)」を通じてインストールする事も可能となっています。

「Parallels Tools」をメニューからインストールする場合には、「Actions(処理)」>「Install Parallels Tools…(Parallels Toolsのインストール…)」を実行します。すると、ptiagent(Parallels Tools Installation Agent)が起動しますので、同時に表示された認証ダイアログボックスに管理者権限のパスワードを入力すると、コマンドを入力する事なく、自動でインストールプロセスが進行します。この辺りのハンドリングは、「Parallels Desktop 13 for Mac」からの改善点の一つとなり、シンプル、且つユーザービリティに優れたプロセスと言えるでしょう(「Oracle VM VirtualBox」でも、類似したインターフェイスが提供されています。尚、VMwareの場合は「VMware Tools」ではなく、各OSベンダー、OSコミュニティから提供されているオープンソース実装「open-vm-tools」を利用した運用が推奨されています)。

「Parallels Tools」のインストール後には、タイムシンクロナイズ、共有フォルダー、クリップボード共有、ドラッグアンドドロップ等の諸機能が利用可能となりますが、現時点では動作しない(或いは動作しても適切に機能しない)機能も確認されていますので、本格的に利用される場合等には正式対応を待たれた方が良いかと思われます(Linux(ゲストOS)に向けたCoherence(コヒーレンス)モードは、「Parallels Desktop 15 for Mac」より機能の提供が終了しています)。

一方で「Parallels Desktop 15 for Mac」からは、準仮想化デバイスのフレームワーク「virtio(virtio-gpu)」がサポートされており、「Parallels Tools」がインストールされていない環境でも、マウスシンクロナイズとダイナミックレゾリューションが機能するようになっています。これは、特に新規インストールを行う場合には有効な機能となるでしょう。

プリインストールされているテーマは「Mint-Y」ではなく、「Adwaita」と「Yaru」が中心

Ubuntuでは、英国時間2018年10月18日付にてリリースされた「Ubuntu 18.10(Cosmic Cuttlefish)」より、「Ubuntu」セッションに対するデフォルトのテーマとして、コミュニティの主導によって開発された「Yaru(Communitheme)」が採用されていますが、「Ubuntu Cinnamon 23.04(Lunar Lobster)」のテーマも、Linux Mintによる「Mint-Y」ではなく、「Adwaita」と「Yaru」を中心にプリインストールされています。


「Preferences」>「Themes」におけるテーマ選択画面。「Mint-Y」ではなく、「Adwaita」と「Yaru」を中心にプリインストールされている。


「Ubuntu Cinnamon 23.04(Lunar Lobster)」におけるデスクトップ。「Ubuntu Cinnamon 23.04(Lunar Lobster、ゲストOS)」on「Parallels Desktop 18 for Mac(18.2.0 Build 53488)」on「macOS Ventura(macOS 13.3.1、ホストOS)」。

メモリー使用量

起動直後のメモリー使用量は約984MBとなっており、中、重量級のディストリビューションと言えるでしょう。参考までに「Linux Mint 20.3(Una)」を「VMware Fusion 12」で実行した場合には約768MB、「Linux Mint 21.1(Vera)」を「Parallels Desktop 18(Intel)」で実行した場合には約597MBの値を検出しています(Parallels Desktopの方が低い値を記録していますが、この数字は環境によって誤差が生じ得る事を御了承下さい)。

Linuxカーネル、公式フレーバー、日本語 Remix

GAリリース時において「Linux Kernel 6.2.0」「X.Org Server 21.1.7」を実装する 「Ubuntu 23.04(Lunar Lobster)」では、フラッグシップのGNOME版、当ポストにて紹介している「Ubuntu Cinnamon(Cinnamon)」の他に、デスクトップ環境、パッケージ構成等の異なる公式フレーバーとして、「Kubuntu 23.04(KDE Plasma)」「Xubuntu 23.04(Xfce)」「Lubuntu 23.04(LXQt) 」「Ubuntu MATE 23.04(MATE)」「Ubuntu Budgie 23.04(budgie-desktop)」等も併せてリリースされています。

通常版としてリリースされている「Ubuntu 23.04(Groovy Gorilla)」では、2024年1月までの9ヶ月のサポート期間が設けられており、Ubuntu Japanese Teamからは、ライブ環境での日本語サポート、及び同チームによる追加パッケージ等を含む「Ubuntu 23.04 日本語 Remix」のリリースも予定されています。