「Ubuntu 20.10」を「Parallels Desktop 16」にインストール

CanonicalによるLinuxディストリビューション「Ubuntu 20.10(開発コードネーム「Groovy Gorilla」)」が、英国時間2020年10月22日付にてGAリリースを迎え、現在Ubuntu Foundationによる公式ダウンロードページを通じて、x86-64(AMD64)を対象としたisoイメージが入手可能となっています。今回は、同オペレーティングシステムを macOS(Mac OS X)ベースのデスクトップ仮想化ソフトウェア「Parallels Desktop 16 for Mac」にゲストOSとしてインストールしてみましたので、そのプロセス等を簡単に纏めてみたいと思います。

「Parallels Tools(for Linux)」もインストール可能

「Parallels Desktop for Mac」では、米国時間2009年11月4日付にてリリースされた「Parallels Desktop 5 for Mac」より、Linux(ゲストOS)ゲストを対象とした自動インストール機能「Linux Express Installation(Linux簡易インストール)」オプションが実装されている他、「New Virtual Machine Assistant(新規仮想マシンアシスタント)」を通じて、プリセット済みの仮想アプライアンスをダウンロードする事も可能となっていますが、当ポストでは、インストーラーを通じたマニュアルインストールを実践しています(ゲストOSのタイプとして「Ubuntu Linux」を選択しています)。

「Ubuntu」では、Live CDを そのままインストールCDとして利用する事が可能となっており、ウィザードに従って インストールオプションやタイムゾーン指定、キーボードレイアウトの選択、及びアカウント設定等を行っていく事となります。

今回は、インストール時のオプションとして「Ubuntu 18.04 LTS(Bionic Beaver)」より新たに追加された「Minimal installation(最小インストール)」構成を選択しています。このオプションは、インストール時に Webブラウザー(Firefox)と基本ユーティリティのみをインストールする事によって、消費されるディスク容量の低減やアップデート時間の短縮等に貢献します(初期状態でインストールされないアプリケーションには、メールクライアントの「Thunderbird」、オフィススイートの「LibreOffice」、メディアプレーヤの「Rhythmbox」、ラスターグラフィックスソフトウェアの「GIMP(GNU Image Manipulation Program)」等が含まれます)。

「Ubuntu 20.10」の最小インストール
↑「Ubuntu 20.10(Groovy Gorilla)」におけるインストールオプション「Minimal installation(最小インストール)」。「Ubuntu 18.04 LTS(Bionic Beaver)」より新たに導入され、Webブラウザーと基本ユーティリティのみをインストールします

「Parallels Desktop 16 for Mac」は、米国時間2020年11月18日付にてリリースされた「Parallels Desktop 16.1.1(現行GA版)」の段階において「Ubuntu 20.10(Groovy Gorilla)」をゲストOSとして正式にサポートしていませんが、同梱されているゲストOS拡張機能「Parallels Tools」をカーネルモジュールとして組み込む事が可能です。

※事前に「libelf-dev」「dkms」がインストールされている必要があるので、状況に応じて パッケージ管理システム「APT(Advanced Packaging Tool)」を通じてインストールします。この場合には、「Terminal(端末)」を通じて以下のコマンドを実行します(要管理者権限)。

sudo apt install libelf-dev
sudo apt install dkms

尚、パッケージ名をスペースで区切る事によって、複数のパッケージを1行のコマンドでインストールする事も可能です(APTのGUIフロントエンド「Synaptic Package Manager(Synapticパッケージマネージャー)」は、デフォルトではインストールされません)。

「Parallels Tools」をメニューからインストールする場合には、「Actions(処理)」>「Install Parallels Tools…(Parallels Toolsのインストール…)」を実行します。すると、ptiagent(Parallels Tools Installation Agent)が起動しますので、同時に表示された認証ダイアログボックスに管理者権限のパスワードを入力すると、コマンドを入力する事なく、自動でインストールプロセスが進行します。この辺りのハンドリングは、「Parallels Desktop 13 for Mac」からの改善点の一つとなり、シンプル、且つユーザービリティに優れたプロセスと言えるでしょう(「Oracle VM VirtualBox」でも、類似したインターフェイスが提供されています。尚、VMwareの場合は「VMware Tools」ではなく、各OSベンダー、OSコミュニティから提供されているオープンソース実装「open-vm-tools」を利用した運用が推奨されています)。

「Parallels Tools」のインストール後には、タイムシンクロナイズ、共有フォルダー、クリップボード共有、ドラッグアンドドロップ等の諸機能が利用可能となりますが、現時点では動作しない(或いは動作しても適切に機能しない)機能も確認されていますので、本格的に利用される場合等には正式対応を待たれた方が良いかと思われます(Linux(ゲストOS)に向けたCoherence(コヒーレンス)モードは、「Parallels Desktop 15 for Mac」より機能の提供が終了しています)。

一方で「Parallels Desktop 15 for Mac」からは、準仮想化デバイスのフレームワーク「virtio(virtio-gpu)」がサポートされており、「Parallels Tools」がインストールされていない環境でも、マウスシンクロナイズとダイナミックレゾリューションが機能するようになっています。これは、特に新規インストールを行う場合には有効な機能となるでしょう。

「Raspberry Pi」に向けたインストールイメージを提供

Ubuntuでは、英国時間2017年10月19日付にてリリースされた「Ubuntu 17.10(Artful Aardvark)」より、デフォルトのデスクトップセッションとして、Canonicalによる「Unity」シェルに代わり「GNOME」シェルが採用されています。これはアップストリームのGNOMEに、テーマのカラーリングや「Ubuntu Dock」の採用等、独自のカスタマイズを加えたものとなり、「Ubuntu」セッションとして登録されています(Unityで見られたMac OS Xライクなグローバルメニューは採用されておらず、各種のコントロールボタンは、ウインドウの右上部に配置されています)。

「Ubuntu 18.10(Cosmic Cuttlefish)」以降では、この「Ubuntu」セッションに対するデフォルトのテーマとして、コミュニティの主導によって開発された「Yaru(Communitheme)」が採用されています。

ヴィヴィットなカラーリングを伴う同テーマの名称は、日本語の「やる」に由来しており、「Ubuntu 20.04 LTS(Focal Fossa)」以降では、「Settings(設定)」>「Appearance(外観)」を通じて、ダークモードが指定可能となりました。「Ubuntu 19.10(Eoan Ermine)」までは、カスタマイザーの「GNOME Tweaks」をインストールする事によって、ダークモード(Yaru-dark)に対応していましたが、「Ubuntu 20.04 LTS(Focal Fossa)」以降では デフォルトの機能として実装された形となります(パッケージ管理システム「APT(Advanced Packaging Tool)」から「gnome-session」「vanilla-gnome-desktop」をインストールする事によって、「Ubuntu GNOME」で採用されていた プレーンなGNOMEの環境を利用する事も可能となっています)。

また、この度リリースされた「Ubuntu 20.10」では、ARMベースのシングルボードコンピューター「Raspberry Pi(ラズベリーパイ、ラズパイ)」がサポートされ、デスクトップ版では「Raspberry Pi 4」「Raspberry Pi 400」を対象としたインストールイメージ(Live CD)が提供されています。

「Ubuntu 20.10」のダークモード
↑「Ubuntu 20.10(Groovy Gorilla)」における「Yaru」テーマのダークモード。「Ubuntu 20.10(Groovy Gorilla、ゲストOS)」on「Parallels Desktop 16 for Mac(16.1.1 Build 49141)」on「macOS Big Sur(macOS 11.0、ホストOS)」

Linuxカーネル、公式フレーバー、日本語 Remix

GAリリース時において「Linux Kernel 5.8.0」「X.Org Server 1.20.9」を実装する 「Ubuntu 20.10(Groovy Gorilla)」では、当ポストにて紹介しているGNOME版の他に、デスクトップ環境、パッケージ構成等の異なる公式フレーバーとして、「Kubuntu 20.10(KDE Plasma)」「Xubuntu 20.10(Xfce)」「Lubuntu 20.10(LXQt) 」「Ubuntu MATE 20.10(MATE)」「Ubuntu Budgie 20.10(budgie-desktop)」等も併せてリリースされています(「Ubuntu Budgie(旧budgie-remix)」は、英国時間2017年4月13日付にてリリースされた「Ubuntu Budgie 17.04(Zesty Zapus)」より、新たに公式フレーバーとして採用されています。また、Lubuntuでは「Lubuntu 18.10(Cosmic Cuttlefish)」より、デスクトップ環境が LXDEからLXQtに変更されています)。

通常版としてリリースされている「Ubuntu 20.10(Groovy Gorilla)」では、2021年7月までの9ヶ月のサポート期間が設けられており、Ubuntu Japanese Teamからは、ライブ環境での日本語サポート、及び同チームによる追加パッケージ等を含む「Ubuntu 20.10 日本語 Remix」もリリースされています。