Oracle Corporationより米国時間2019年9月16日、開発過程にある次世代デスクトップ仮想化ソフトウェア「Oracle VM VirtualBox 6.1」の最新プレビュー版に相当する「Oracle VM VirtualBox 6.1.0 Beta 1 Build 133315(VirtualBox 6.1.0 Test Release 1)」がリリースされ、現在コミュニティサイトを通じて、OS X、Windows、Linux、Solarisを対象としたバイナリパッケージ、ソースコード、SDK(Software Development Kit)、及びPUEL(VirtualBox Personal Use and Evaluation License)に準拠したエクステンションパック(Oracle VM VirtualBox Extension Pack)が入手可能となっています(Mac OS X版 dmg 約121.0MB。バイナリとソースコードには、ライセンスとしてGPLv2(GNU General Public License Version 2)が適用されています)。
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旧スタイルのVBoxVGAを廃止し、VBoxSVGA、VMSVGAに注力
次世代版のテスト、評価等を主目的としたプレビュー版として位置付けられている当版では、機能の追加、パフォーマンス改善等が行われており、主な特徴として、以下の項目等が示されています(「6.0.12 Build 133076」からの主な変更点となります)。
- クラウド関連の改善。OCI(Oracle Cloud Infrastructure)から仮想マシンをインポート可能に
- OCIに対して仮想マシンをエクスポートするための機能を拡張。再アップロードする事なく、複数の仮想マシンを作成可能に
- より効率的な準仮想化のバリアントを使用して、クラウドに対して仮想マシンををエクスポートするためのオプションを追加
- 仮想化コアの改善。Intel CPUにおいて、ネストされたハードウェア仮想化をサポート(第5世代のCore i(コードネーム「Broadwell」)以降)
- 3Dグラフィックスを含むグラフィックス関連の改善。新スタイルの3Dサポート(VBoxSVGA、VMSVGA)を残し、旧スタイル(VBoxVGA)を完全に除去
- ユーザインターフェイス関連の改善(GUI関連の改善)。仮想ISOイメージの作成、及びファイルマネージャダイアログを改善
- GUIクライアント(Oracle VM VirtualBox Manager(Oracle VM VirtualBoxマネージャ))における仮想マシンリストを改善。仮想マシングループが視覚的に明確化され、VMの検索機能を改善。残りのリストで それがスクロールされないように、グローバルツール要素が所定の位置に固定されるべくした改善を適用
- GUIクライアントにおける「Details(詳細)」ペインに、最も重要だと判断された特定の仮想マシン属性に向けた埋め込みエディタを追加。仮想マシン設定ダイアログを開く事なく対応可能なハイパーリンクをクリックする事によって、オンザフライに属性を編集可能に
- ユーザが多数のメディアを登録している場合に、負荷を低減してパフォーマンスを最適化するために、内部的な中間エニュメレーションルーチンを最適化。また、「Virtual Media Manager(仮想メディアマネージャー)」を通じて、既存のメディアを追加(或いは新規作成)する事を再許可
- GUIクライアントにおける「Storage(ストレージ)」ペインに、ユーザビリティの向上に向けた微調整を適用。ユーザによって、コントローラバスタイプが変更可能となり、ドラッグアンドドロップを使用して、コントローラ間で添付ファイルを移動可能に
- ゲストOSに対してキーボード入力を可能とする、新たなソフトキーボード(仮想キーボード)を実装
- セッションインフォメーションダイアログ(GUI)を改善、及び拡張
- 入力関連の改善。IntelliMouse Explorerプロトコルを使用するPS/2マウスにおいて、水平スクロールのサポートを追加(この機能は、Linuxゲストにおいて、自動的に使用可能となる。Windowsゲストには非対応)
- コマンドラインユーティリティ「VBoxManage」関連の改善。「vboximg-mount」コマンド。ホストでのサポートを必要としないディスクイメージにおいて、NTFS(NT File System)、FAT(File Allocation Table)、ext2/3/4ファイルシステムに対する ダイレクトなリードオンリーアクセスを試験的にサポート
- And many others…
当版におけるシステム要件は、64bitプロセッサを搭載したApple製コンピュータ、ホストOSは「macOS Sierra 10.12」以降(「macOS Mojave 10.14」を含む)となっています。ゲストOSとしてmacOS(OS X)をインストールする事も可能となっていますが、サポート対象外となりますので御注意下さい(ゲストOS拡張機能「Guest Additions」も用意されていません)。また、既知の問題点を含む その他の詳細が、リリースノート、OTN(Oracle Technology Network)等を通じて確認可能となっています。
尚、「6.1.0 Beta 1 Build 133315」の時点において、「macOS Catalina 10.15」は ホストOSとして正式にサポートされていませんが、インストールして試用する事は可能となっています。
「VirtualBox 6.1 Beta 2」について(2019年11月3日に追記)
「Beta 1 Build 133315」に引き続き、米国時間2019年10月24日付にて「Oracle VM VirtualBox 6.1.0 Beta 2 Build 134221(VirtualBox 6.1.0 Test Release 2)」がリリースされました。当版における主な変更点として、以下の項目等が示されています。
- 仮想化コアの改善。ドロップリコンパイラ。例えば仮想マシンの実行には、ハードウェア仮想化をサポートするCPUが必要となるべくした変更を適用
- ランタイムの改善。多数のCPUコア(最大1024コア)を有するホストコンピュータにおいて動作可能に
- ユーザインターフェイス(GUI)関連の改善。セッティングエディタにおける「Storage(ストレージ)」「Network(ネットワーク)」設定ページのバグフィックス、及びユーザビリティの最適化
- ステータスバーにおけるCPUインジケータの一部として、仮想マシンのPU負荷を表示可能に
- 「Virtual Media Manager(仮想メディアマネージャー)」において、メディアのエニュメレーションを修正
- ポップアップメッセージ、マウスクリック、及び「Details(詳細)」ペインを修正
- ソフトウェアキーボードに対して、マルチメディアキーを追加
- クラウド関連の改善。OCIに対して、よりフレキシブルに仮想マシンをエクスポート、インポート可能に
- クラウドイメージに対して、フリーフォームのタグを追加可能に
- 3Dグラフィックスを含むグラフィックス関連の改善。Windowsホストにおいて、追加のテクスチャフォーマットをサポートした他、発生し得たフリッカリングを修正
- NAT関連の改善。TFTP(Trivial File Transfer Protocol)における OACK(オプション肯定応答)レスポンスを修正し、要求にオプションがある場合にのみ送信すべくした変更を適用
- API関連の改善。仮想マシンの移動機能から、残量を低減すべくした改善を適用
- オーディオ関連の改善。仮想マシンがサスペンド状態である場合にも、ホストのオーディオバックエンドの変更が許容されるべくした変更を適用
- コマンドラインユーティリティ「VBoxManage」関連の改善。「vboximg-mount」コマンドが、Linuxホストにおいても利用可能に
- 「VBoxManage」において、クラウド関連の機能を強化(クラウドインスタンスの起動等)
- 「vboxmanage guest control」機能の一部として、ターゲットディレクトリに対する 複数のソースファイル/ディレクトリの移動をサポート
- Appleによるデスクトップオペレーティングシステム「macOS Catalina 10.15」をホストOSとして使用した場合に頻出していた、仮想マシンのクラッシュを修正
- Windowsホストにおいて、USBデバイスのキャプチャ精度を改善
- EFI(Extensible Firmware Interface)関連の改善。より新しいファームウェアコードベースへの切り替え、及びNVRAMサポートの追加(多くのOSとの互換性が、大幅に改善されると見込まれる)
GA版のリリース前に、更にBeta版(或いはRC版)が公開されるようでしたら、引き続きこのエントリに追記していきたいと考えております。
「VirtualBox 6.1 RC 1」について(2019年11月23日に追記)
「Beta 2 Build 134221」に引き続き、米国時間2019年11月22日付にて「Oracle VM VirtualBox 6.1.0 Release Candidate 1 Build 134891(VirtualBox 6.1.0 Test Release 3)」がリリースされました。当版における主な変更点として、以下の項目等が示されています。
- ゲストOS拡張機能「Guest Additions」関連の改善。HiDPIモードにおいて、マウスカーソルを適切にスケーリングする事ができなかったマウス統合関連の問題を修正
- GUI関連の改善。「File(ファイル)」>「Export Appliance…(仮想アプライアンスのエクスポート…)」を対象として、ユーザビリティ関連の修正を適用
- アクセシビリティ機能が有効化されている場合に、クラウド関連のウィザードがクラッシュするケースが確認されていた問題を修正
- ソフトウェアキーボードのヴィジュアルを改善した他、初回使用時に発生し得たクラッシュを修正
- VISOクリエイタ等の新機能を無効化にすべくして、欠落していた制限オプションを追加
- メディア選択のインターフェイスにおける一貫性を向上(既知の画像を表示し、ファイルピッカーを使用して選択する事が可能となった)
- 各種の関連ドキュメントを改訂。サポート対象ホストOSを追加した他、新たなマニュアルページを追加(更なる改訂も予定されている)
- 仮想化コアの改善。Intel CPUにおいて、ネストされたハードウェア仮想化を改善
- 3Dグラフィックスを含むグラフィックス関連の改善。新スタイルの3Dサポート(VBoxSVGA、VMSVGA)の改善。OpenGLを使用するホストOS(一部のmacOS、Linux)にて、YUV2、及び関連するテクスチャフォーマットをサポート(ホストコンピュータのGPUに対して色空間の変換を委任する事によって、3Dグラフィックスが有効化された場合に、ビデオの再生がアクセラレートされる)。また、一部の3Dケースに向けて、描画関連の修正を適用
- USB関連の改善。EHCI(Enhanced Host Controller Interface)コントローラの実装を改善
- フィルタがポートパスを特定して、システム内のポートを一意に識別可能に
- ネットワーク関連の改善(NAT)。承認された着信接続に向けて、ノンブロッキングソケットが使用されるべくした変更を適用(Linux)
- PCnet-ISA関連の改善。新たにネットワークアダプタタイプを追加可能に(Ver. 6.0までは、コマンドラインインターフェイスのみの対応)
- SMBIOS(System Management BIOS)関連の改善。当版において新たに作成された仮想マシンにおいて、システムのUUID(Universally Unique Identifier)を 新たなデフォルトであるリトルエンディアン形式にて保存すべくした変更を適用。既存の仮想マシンは、Windows(ゲストOS)のアクティベーションステータスを損なわないように(下位互換性を維持するために)ビッグエンディアン形式で保存する、従来のVBoxの挙動を維持する)
- Windowsホストにおいて、VBoxSDLフロントエンドの動作を修正
- コマンドラインユーティリティ「VBoxManage」関連の改善。ホストの情報をリストした場合に、幾つかのCPU機能(「unrestricted guest」「nested HW virtualization」)を表示すべくした変更を適用
- ファイル転送に向けて、共有クリップボードの試験的なサポートを実装(デフォルトでは無効化)
- ゲストOS、ホストOS双方において、「Linux Kernel 5.4」をサポート
- LinuxゲストOS、ホストOS双方において、ビルド時に カーネルモジュールのサイニングを強制的に無効化可能に(後に行う事が可能)
- ゲストOS拡張機能「Guest Additions」関連の改善。VBoxSVGAに向けたドライバにおいて、描画関連の多数の問題を修正(Windows Addiitons)
- レガシーなVBoxVGAアダプタを対象として、幾つかの修正を適用。従来までのワーキングケースをリストア(Windows Addiitons)
- VBoxSVGAを対象として、VHWA機能をリストア(Windows Addiitons)
GA版のリリース前に、更にRC版が公開されるようでしたら、引き続きこのエントリに追記していきたいと考えております。