「Parallels Desktop 15(15.0.0)」リリース、「macOS Catalina」をサポート

Parallels International GmbHより米国時間2019年8月12日、macOSベースのデスクトップ仮想化ソフトウェア「Parallels Desktop for Mac」のアップグレードリリースに相当する「Parallels Desktop 15 for Mac 15.0.0 Build 46967(GA版)」がリリースされ、現在Parallelsによる公式ダウンロードページを通じて、日本語含む複数言語リソースを包含する マルチリンガル版のバイナリーパッケージが入手可能となっています(アプリケーションをアクティベートするために、インターネット接続環境が必要となります)。

macOSのグラフィックスAPI「Metal 2」をサポート

米国時間2019年4月10日よりテストリリース(プライベートベータ「pdfm 2019 TP」)が開始されていた当版では、一連のテストリリース(「April Technical Preview 1 Build 46605」~「August Technical Preview 3 Build 46897」)を通じた主な特徴として、以下の項目等が示されています(「14.1.3 Build 45485」からの主な変更点となります)。

サポート対象オペレーティングシステムの追加

  • Appleによる次世代デスクトップオペレーティングシステム「macOS Catalina(macOS 10.15)」を ゲストOS、ホストOSとして試験的にサポート(ゲストOSとしては、Mac App Storeから入手可能なインストーラー(.app)、或いはリカバリーパーティション(APFS(Apple File System))を通じてインストール可能。インストーラーパッケージに含まれる「InstallESD.dmg」を抽出する必要はない)。「macOS Catalina(macOS 10.15)」の正式リリース後には、ParallelsのサポートステータスもGAに昇格する予定

WindowsとmacOSの統合

  • macOS(ホストOS)、Windows(ゲストOS)間において、ピクチャーファイル(スクリーンショットサムネイル等)をドラッグアンドドロップ可能に。Safari、Photosアプリケーションからのイメージもサポート
  • Windows(ゲストOS)のメールクライアントに、macOS(ホストOS)の「Finder」に属するファイルを添付して送信可能に。この場合には、「Finder」コンテキストメニューの「Share…(共有…)」項目から、Windows(ゲストOS)のデフォルトメールクライアントを指定して送信する事が可能

Boot Camp仮想マシン関連の改善

  • 新たに実装された、Boot Campインポートウィザード。Boot Camp仮想マシンを有している環境では、同パーティションにインストールされたWindowsシステムを macOS(ホストOS)サイドにインポートする事が可能となった。このオプションは、幾つかのメニュー(「Free Up Disk Space(ディスクスペースの解放)」ダイアログ等)において使用可能
  • Boot Camp仮想マシンを起動した後に、Windows(ゲストOS)のアクティベーションが解除されるケースが確認されていた問題を修正
  • Boot Camp仮想マシンにおけるWindows(ゲストOS)に対してメジャーアップデートが配信された場合に、GUIクライアント(Parallels Desktop.app)から通知が発せられるべくした改善を適用。尚、Parallels Desktopは Boot Camp仮想マシンにインストールされたWindows(ゲストOS)をアップデートする権限を有していないため、この場合には 仮想マシンをシャットダウンし、ホストコンピューター(Mac)を直接Windowsから起動し、Microsoft Update(Windows Update)を通じて 当該のアップデートをインストールする必要がある
  • Boot Camp仮想マシンのコンソールウインドウを閉じる際に、仮想マシンをサスペンドさせるか、或いはシャットダウンさせるかの何れかを ユーザーに尋ねるべくした変更を適用
  • Boot Camp仮想マシンに向けたアイコンを、Appleベースからオリジナルベースに変更

ユーザーインターフェイス(GUI)関連の改善

  • 「New Virtual Machine Assistant(新規仮想マシンアシスタント)」における、仮想マシン名、及びロケーションを設定するためのダイアログを再デザインし、ホストコンピューターの空きディスク容量が少ない場合のシナリオをカバーすべくした改善を適用
  • Parallels Desktopを手動でアップデートする場合に表示されるGUIクライアント(Parallels Desktop.app)の終了を促すダイアログボックスに、「Quit Parallels Desktop(Parallels Desktopを終了)」ボタンを追加
  • 仮想マシンが適切にシャットダウンされなかった場合に、GUIクライアント(Parallels Desktop.app)から 次回起動時のチェックディスクプロセスについて通知されるべくした改善を適用

ユーザービリティ、Coherence(コヒーレンス)モード関連の改善

  • スナップショットを通じて任意の過去の状態にリストアする場合に、現在の状態を保存するか否かを尋ねるべくした変更を適用(「VMware Fusion」「VirtualBox」と同様のハンドリング)
  • Coherenceモードにおいて、Windows(ゲストOS)を使用する方法を説明するためのイントロダクションスクリーン(紹介画面)を追加(ウインドウモードにおいてゲストOSを実行している状態で、「View(表示)」>「Enter Coherence(コヒーレンスを実行)」を選択)。仮に当該画面が表示されない場合には、GUIクライアント(Parallels Desktop.app)に用意されているアラートのリセットボタン(「Parallels Desktop」>「Ppreferences…(環境設定…)」>「Advanced(詳細)」>「Reset all dialog warnings(すべてのダイアログの警告をリセットする)」)をクリックする。その後にプリファレンスウインドウを閉じて、再度 Coherenceモードを実行する
  • Coherence(コヒーレンス)モードへの切り替え時に、よりシームレス、且つスムーズに遷移されるべくした改善を適用。仮想マシンをダイレクトにCoherence(コヒーレンス)モードで起動した場合に、当該Windows(ゲストOS)の状況をプレビューアイコンを通じて確認可能に
  • Parallelsアカウントの認証情報をキーチェーンに保存可能に。GUIクライアント(Parallels Desktop.app)から自身のParallelsアカウントへのログインが成功した後に、当該の認証情報をmacOSの「Keychain(キーチェーン)」に保存可能に(Parallelsアカウントに再びサインインする必要が生じた場合には、それらがオートフィルにて自動入力される)

「Windows 10(ゲストOS)」のインストール時に導入される、新たなウェルカムページ

  • 「Windows 10(ゲストOS)」のインストール後に、Microsoft Edgeにおいて自動的に開く、新たなウェルカムページ(Webページ)をデザイン。このページでは、Parallels Desktopの基本機能が紹介され、当該ページを後に手動で開く事も可能

デバイス関連の改善。Intel HD Audio(Intel High Definition Audio)のサポート

  • このオーディオドライバは、最大8/2チャンネル(out/in)、192kHzサンプルレート、32bitサンプル、及び⁠Jack Senseをサポートする。既存の仮想マシンにおけるオーディオドライバを変更するためには、当該仮想マシンをシャットダウンし、「Virtual Machine Configuration(仮想マシン構成)」>「Hardware(ハードウェア)」>「Sound & Camera(サウンドとカメラ)」を選択し、「Advanced Settings(詳細設定)」のドロップダウンメニューから「HD」を選択する。この機能をサポートするゲストOSは、「Windows 7」「Windows 10」「Ubuntu 16.04(Xenial Xerus)」「Ubuntu 17.10(Artful Aardvark)」、及び「Mac OS X Server 10.5 Leopard」〜「macOS Mojave 10.14」

BLE(Bluetooth Low Energy)を含む、Bluetooth関連の改善

  • BLEのサポート。共有Bluetoothドライバーが Ver. 4.0にアップグレードされ、低エネルギー性能をサポート。種々のIoT(Internet of Things)デバイスをWindows(ゲストOS)に対して接続可能に。現時点における対応デバイスは「IrisPen」「Logitech Craft Keyboard」「Sony PlayStation Dual Shock 4」等。この機能をサポートするゲストOSは、「Windows 8.1」「Windows 10」「Linux Kernel 3.13」以降、及び「Android」。仮想マシンにおいてBLEを使用するためには、追加のアプリケーションをインストールする必要がある(Windows(ゲストOS)の場合には「Bluetooth LE Explorer」、Linux(ゲストOS)の場合には「hcitool」+「gatttool」ユーティリティ)
  • 仮想マシンのレジューム時における、Bluetoothデバイスの自動接続。仮想マシンに対してBluetoothデバイスを接続した状態でサスペンドした場合に、当該デバイスが 仮想マシンのレジューム時に自動的に再接続されるべくした改善を適用
  • Bluetoothサポートの改善の結果として、Microsoft Xbox One Bluetoothコントローラ、Sony PlayStation Dual Shock 4コントローラー、IRISPen、Logitech Craftキーボード等のデバイスを新たにサポート

NVMe仮想ディスクコントローラーのサポート

  • SATA(Serial ATA)の置き換えを担うべくした次世代のインターフェイス規格「NVMe(NVM Express(Non-Volatile Memory Express))」コントローラーのエミュレーションをサポート。仮想ディスクパフォーマンスの改善を期待できる NVMe(NVM Express(Non-Volatile Memory Express))タイプの仮想ディスクコントローラーは、「Windows 10(ゲストOS)」に向けた仮想マシンを作成した場合には、デフォルトにて有効化される(現時点では、既存の仮想マシンをNVMeタイプに変更する事はできない)。この機能は前版(Ver. 14)のBetaテスト時にも実装されたが、時期尚早として回避された経緯がある。尚、この機能は、仮想ディスクのパフォーマンス、安定性の改善、及び同規格のリサーチ等を主目的としており、既存の仮想マシンのディスクアダプタータイプを変更するのではなく、新規に作成した仮想マシン(Windows10(ゲストOS))において選択するように呼びかけられている。NVMe仮想ディスクを試すためには、「Windows 10(ゲストOS)」に向けた新たな仮想マシンを作成し、「Virtual Machine Configuration(仮想マシン構成)」において、当該ハードディスク(仮想ディスク)のロケーション(「Hardware(ハードウェア)」>「Hard Disk(ハードディスク)」>「Advanced Settings(詳細設定)」)が、NVMeである事を再確認する

Windowsキーボードレイアウトのサポートの改善、再デザイン

  • Excel(ゲストOSアプリケーション)に向けて「controk(Ctrl)」+「+」、「controk(Ctrl)」+「-」をサポート
  • JIS(Japanese Industrial Standards、日本工業規格)キーボードのサポートを改善
  • 英語以外の殆どのキーボードレイアウトを対象として、capsロックが有効になっている場合の入力を修正

仮想マシンに対して、外部ディスクを内部ディスクとして接続可能に

  • ホストコンピューター(Mac)に接続された USB、或いはThunderbolt外部ディスクを、仮想マシンに対して新たな内部ハードディスクとして接続可能に。この機能によって、それらの外部ディスクに対してゲストOSをインストールして起動させる事が可能となった。Boot Canp仮想マシンと同様のハンドリングとなるこの機能では、当該ディスクはゲストOS標準のファイルシステムにフォーマットされ、サスペンド、レジューム、スナップショット等、Parallels仮想ディスク(.hdd、.hds)を前提とした機能を使用する事はできない。また、この環境での仮想マシンのパフォーマンスは、外部ディスクの接続スピードに依存する

仮想マシンに対して外部ディスクを接続する方法

  1. ホストコンピューター(Mac)に対してディスクを接続し、ソースイメージを選択しない状態で 新規に仮想マシンを作成
  2. 「Virtual Machine Configuration(仮想マシン構成)」>「Hardware(ハードウェア)」>「Hard Disk(ハードディスク)」>「Source(ソース)」から「Physical disk(物理ディスク)」を選択し、必要なディスクを選択して「OK」をクリック
  3. その後、同じカテゴリから「Boot Order(ブート順序)」設定を開き、次に、「Hard Disk 2(ハードディスク 2)」を有効にして、起動用の最初のデバイスとして配置する
  4. 「Virtual Machine Configuration(仮想マシン構成)」ウインドウを閉じて、当該仮想マシンを起動する

Parallels SDKの改善

  • 「Parallels Virtualization SDK Build 46829」より、新たに「Python 3.0」をサポート

Retinaディスプレイに対するサポートの改善

  • Retinaディスプレイを搭載したMacをホストコンピューターとして使用している環境を対象として、「Windows 10(ゲストOS)」、及び様々なモニター構成における(DPIスケーリングを含めた)ユーザーエクスペリエンスを改善(Retina解像度モードを全ての構成に向けて再設計)。Windows(ゲストOS)がインストールされた仮想マシンにおいて、「View(表示)」>「Retina Resolution(Retina解像度)」>「Best for external displays(外部ディスプレイに最適)」オプションを選択する事によって使用可能(仮想グラフィックスシステムにおける負荷が大幅に軽減され、パフォーマンスが改善される)

3Dグラフィックスを含むグラフィックス関連の改善

  • ゲストOSにおける3Dグラフィックスのパフォーマンスを向上させるために、AppleによるグラフィックスAPI「Metal 2」を活用可能に(Windows(ゲストOS)において、新たに「Autodesk 3ds Max 2020」「Lumion」「ArcGIS Pro 2.3」、MasterSeriesの製品等を実行可能に)
  • ゲストOSにおいて、「Madden NFL 19」「Age of Empires:Definitive Edition」「Anno 2205」「Railway Empire」「Space Engineers」「Frostpunk」「Risk of Rain 2」等、Steam配信を含むポピュラーなゲームアプリケーションをゲストOSにおいて実行可能に
  • Metalエンジンを通じて、「Direct3D」グラフィックスをアクセラレート可能に
  • 準仮想化デバイスのフレームワーク「virtio(virtio-gpu)」のサポートにより、最新のLinuxディストリビューション(ゲストOS)との互換性を向上。ゲストOS拡張機能「Parallels Tools」のインストールを伴わすして、スライディングマウス(マウスシンクロナイズ)、ダイナミックレゾリューション、マルチディスプレイ(マルチモニター)モードを利用可能に

「Parallels Desktop for Mac Business Edition」に向けた改善

  • アーカイブされた仮想マシンのデプロイ。ネットワーク負荷を低減するために、仮想マシンをアーカイブして、クライアント(Mac)に展開する事が可能に(アーカイブされると、仮想マシンの拡張子は「.pvm」から「.pvmz」に変更される)
  • 仮想マシンの表示モードを変更する場合に、カスタムパスワード、或いはmacOSの管理パスワードによる認証が必要となるべくした改善を適用
  • ローカルユーザーに対する「Virtual Machine Configuration(仮想マシン構成)」の編集の制限。「Parallels Desktop for Mac Business Edition」にて、Macのワークステーションを管理している場合には、管理者権限を有していないローカルユーザーに対して、「Virtual Machine Configuration(仮想マシン構成)」の編集を制限する事が可能となった。この機能を利用するためには、「Virtual Machine Configuration(仮想マシン構成)」>「Security(セキュリティ)」を開き、「Require password to(次の場合にパスワードを要求する)」項目に含まれる「Change virtual machine configuration(仮想マシンの構成を変更する)」オプションを有効化する。この時に、macOS(ホストOS)の管理者パスワードを要求されるので、それを入力した後に、パネル左下部の鍵(ロック)アイコンをクリックして、セッティングエディタを閉じる。その後、管理者権限を有していない一般ユーザーは、設定エディタ、或いは仮想マシンバンドル(.pvm)に含まれる構成ファイル(.pvs)の何れかを通じた、仮想マシン構成の編集を行う事ができなくなる
  • And many others…

※上記のリストは、「Parallels Desktop 15 for Mac Pro Edition」を対象としていますので、「Standard Edition(通常版)」には実装されない機能も含まれています。

既知の制限事項とシステム要件

「Parallels Desktop 15 for Mac」にて作成された仮想マシンは、旧版の「Parallels Desktop for Mac」とは互換性がありません(例えば、「Parallels Desktop 15 for Mac」においてサスペンドされた仮想マシンは、「Parallels Desktop 13 for Mac」以前でレジュームする事はできません(仮想ハードウェアのステートに矛盾が生じるため))。特に「Parallels Desktop 13 for Mac」以前で作成した仮想マシンをアップグレードする場合には御注意下さい。

また、「Parallels Desktop 3.0 for Mac」以前の環境で作成された、パッケージングされていないレガシーな仮想マシンは、それ以降の版ではサポートされません(そのままの形式では開く事ができず、コンバート可能な版は「Parallels Desktop 4.0 for Mac」に限定されています)。

その他では、外部USBドライブから「Install macOS.app」を使用してmacOS(ゲストOS)をインストールした場合に失敗するケースが確認されている他、「Windows 10 Insider Preview(ゲストOS)」においてグラフィックスアーチファクト、或いはクラッシュが発生するケースも確認されています。

当版におけるシステム要件は、64bitプロセッサーを搭載したApple製コンピューター、ホストOSは「macOS Sierra(macOS 10.12.6)」以降(「macOS Catalina(macOS 10.15)」を含む)となっています。「Parallels Desktop 14 for Mac」にてサポートされていた「OS X El Capitan(OS X 10.11.6)」は、対象外となりますので御注意下さい(ゲストOSとしてのMac OS X(macOS)のサポートは「Mac OS X Server 10.5(Leopard Server)」〜「macOS Catalina(macOS 10.15)」となります)。また、既知の問題点を含む その他の詳細が、リリースノート、PTN(Parallels Technology Network)等を通じて確認可能となっています。