Parallels Desktop for Mac(パラレルスデスクトップフォーマック)

米Parallels International GmbH(旧SWsoft)より開発、提供等が行われている、macOS(Mac OS X)ベースのデスクトップ仮想化ソフトウェア(Type 2 ハイパーバイザー)。GUIクライアント(Parallels Desktop.app)は、Intel、Apple Silicon(Apple M1、Apple M2)の両アーキテクチャーにおいてネイティブ実行可能な「Universal Binary(Universal 2 Binary)」としてビルドされており、Intel版では カーネルモード(特権モード、スーパーバイザーモード、マスターモード)における各種の命令をハードウェアレベルにてハンドリング可能な CPU仮想化支援「Intel VT-x(Intel Virtualization Technology)」をサポートする。

Mac OS XをホストOSとするデスクトップ仮想化ソフトウェアのマーケットを開拓

仮想マシンでは、仮想対称型マルチプロセッシングの「Virtual SMP(Virtual Symmetric Multiprocessing)」に対応する他、バージョンを重ねる毎に対応するコア数や割り当て可能なRAM容量、VRAM(Video RAM)容量等をスケーラブルに拡張している。

また、Coherence(コヒーレンス)モード、共有フォルダー、共有プロファイル、クリップボード共有、コピーアンドペースト、ドラッグアンドドロップ、及び「SmartX」テクノロジーと称される各種機能の実装等により、ゲストOS、ホストOS間におけるシームレスな連携を実現している他、プリビルドされた仮想アプライアンス(Ubuntu、Fedora、CentOS、Debian GNU/Linux、Linux Mint、Android)の提供や各種Parallelsラインナップとの互換性等、仮想化ソリューションにおける有力ベンダーならではの種々のメリットも特徴の一つとして挙げられる。

尚、「Parallels Desktop 3.0 for Mac」までを開発したParallels Software Internationalは現存せず、現在のParallels International GmbHは コンテナー型の仮想化ソフトウェア「Virtuozzo」、コントロールパネルの「Plesk」等を世に送り出したSWsoftが社名を変更した姿である(現在は、Virtuozzo、Plesk共に、関連する別会社として切り離されている)。

ラインナップ、各エディションについて

実装する機能やライセンスに応じて、3種のエディション(Standard Edition、Pro Edition、Business Edition)がラインナップされている。

Standard Edition

ワンタイム(買い切り)、年間サブスクリプション(定期購読)の両ライセンスを提供しており、ニーズに合わせて任意に選択可能としている。アップグレード版は、過去の何れの版からもアップグレードする事が可能となっており、アップグレードさせた旧版のライセンスは無効化される事はなく、以降もそのまま継続して使用する事ができる(アップグレード版というより、既存のユーザーに対する優待版と言ったニュアンスが強い)。

Pro Edition

高度な機能を要するユーザーを対象とした「Pro Edition」は、「Standard Edition」におけるフル機能の他に、以下のアドバンス機能で拡張されている(両版は同一のバイナリーを使用するが、入力するシリアルによって各々が区別される事となる)。

  • リンククローンの作成機能(紐付け、及び紐付けの解除)
  • Microsoft Visual Studioプラグインの提供
  • 拡張された仮想ネットワークツール
  • CLI(Command Line Interface、コマンドラインインターフェイス)ツールによる自動化
  • Docker、Minikube、Vagrant、Packerとの統合
  • 仮想マシンテンプレートの作成
  • 「Control Center(コントロールセンター)」における、項目(仮想マシン)のソート、カラーリング
  • 仮想マシン毎に、最大128GBのRAM容量を割り当て可能(Standard Editionは、最大8GB)
  • 仮想マシンにおいて、最大32コア(32 vCPUs)の「Virtual SMP(Virtual Symmetric Multiprocessing、仮想対称型マルチプロセッシング)」に対応(Standard Editionは、最大4コア(4 vCPUs))
  • メニューから、デバッグ、仮想マシンのダンプ、SSHセッションの開始を制御可能

ライセンスは、月間、或いは年間サブスクリプション(定期購読)のみの提供となっている。

Business Edition

企業での導入を想定した最上位版の「Business Edition」は、年間サブスクリプション(定期購読)のみのライセンス提供となっており、「Standard Edition」「Pro Edition」におけるフル機能の他に、以下のマネジメント機能で拡張されている。

ITを念頭に置いて設計された、ソフトウェアの展開と管理

  • 一元的なボリュームライセンスキーによる、シンプルなマスデプロイメント
  • 企業での利用を想定した、仮想マシンのプロビジョニング(オプション)
  • 合理化されたユーザーエクスペリエンスを提供するための、シングルアプリケーションモード
  • e-mailを通じた新規ユーザーのセットアップ(オプション)
  • ライセンスポータルを通じた透過的なライセンスマネジメント。モニタリング、非アクティブ化、ブラックリストへの登録、管理者の追加、及びオフィスとその部門等に向けたサブキーの導出
  • 24時間年中無休にて、優先的な電話、及び電子メールアクセスによる、ビジネスクラスのサポートを提供
  • 構成可能なソフトウェアアップデートオプション。常に最新のアップデートを取得するか、マイナーアップデートのみを取得するか、ローカルアップデートサーバーを使用するか、或いは更新自体を無効化するかの何れかを任意に決定可能

セキュリティとデータ保護

  • 外部USBデバイスに対して、ポリシーを適用可能
  • 仮想マシンの作成や設定メニューに対する制限機能(制限付き仮想マシン、有効期限付き仮想マシンの作成、実行機能)
  • 仮想ディスクの暗号化
  • Windows(ゲストOS)を対象として、スマートカードリーダーをサポート

ライセンスは「Pro Edition」と同様に、月間、或いは年間サブスクリプション(定期購読)のみの提供となっている。

「Parallels Workstation 2.1 for Mac OS」~「Parallels Desktop for Mac 2.1」

Apple純正デュアルブート支援ツール「Boot Camp 1.0 Beta」が突如としてリリースされ、コンピューター業界が喧騒に包まれた翌日(米国時間2006年4月6日)に、最初のBeta版に相当する「Parallels Workstation 2.1 for Mac OS」がひっそりとリリースされた。その後、同ビルドを含めて6度のBeta、2度のRelease Candidateを経て、機能強化と併せてパフォーマンスと安定性も向上させた後、米国時間2006年6月15日付にて、GA版に相当する「Parallels Desktop for Mac 2.1」がリリースされる事となる。

この時期に、同社のマーケティングマネージャーを務めた Benjamin Rudolph(ベンジャミン・ルドルフ)氏は、頻繁に公式ブログを更新しながらスポークスパーソンとしてソフトウェアの周知と機能のプレビューに尽力し、後のMicrosoftへの移籍の道筋を作った。その後のParallelsとMicrosoftの蜜月な関係は、彼の存在なくして語る事はできない。

「Parallels Desktop for Mac」へと名称を変更

米国時間2006年5月18日付にてリリースされた「Release Candidate 1」のタイミングにて名称の変更が行われ、「Parallels Workstation for Mac OS」から「Parallels Desktop for Mac」へとリブランドされた。この際に、マーケティングマネージャーの Benjamin Rudolph(ベンジャミン・ルドルフ)氏からは「Macらしさを追求するために、Windowsセントリックな「Parallels Workstation」という名称を改め、「Parallels Desktop」を正式名称とする」とのコメントが発せられている。

最終的に、Betaプログラムには75ヶ国から10万人以上のテスターが参加する等、当時から「Intel Macが齎す最大の福音」として大きな注目と期待を集めていた(最終更新日 2023年11月27日)。