VMware, Inc.より米国時間2021年9月22日、開発過程にある 次世代デスクトップ仮想化ソフトウェア「VMware Fusion Tech Preview(for macOS)」の最新プレビュー版(パブリックベータ「Fusion 2021 TP」)に相当する「VMware Fusion Tech Preview 21H1 Build 18656771(e.x.p. 18656771 Sep.)」がリリースされ、現在VMwareによる公式ダウンロードページを通じて、日本語含む複数言語リソースを包含する マルチリンガル版のバイナリーパッケージが入手可能となっています(当版は、現時点では開発過程にあるプレビュー版に相当します。何れの機能も正式なサポートを受ける事はできませんので、試用する場合には御注意下さい。バージョン表記は、現時点では暫定的に付されているものです。今後の開発過程において、正式なバージョン番号が付与されます)。
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ARMベースのLinux(ゲストOS)を、Apple M1 Macにおいて実行可能に
次世代版のテスト、評価等を主目的としたプレビュー版として位置付けられている当版では、新たにARMベースのSoC(System on a Chip)「Apple Silicon」に対応し、同アーキテクチャーを実装するApple M1 Macを ホストシステムとして試用する事が可能となりました。これにより、当該環境においてARMベースのLinux(Ubuntu、Fedora、Debian、VMware Photon OS、FreeBSD等)をゲストOSとして実行する事が可能となります。
尚、Apple Siliconを搭載したMacにおいては、必要なエンジニアリング作業とビジネス価値のバランスを考慮して、x86ベースのゲストOSのインストール、実行をサポートする計画はないと伝えられている他、macOS(ゲストOS)の仮想マシンにおいての実行は、Appleと協力して解決すべき課題が残されているため、短期的にはサポート対象の範囲外になると伝えられています。
「macOS Big Sur(macOS 11.0)」において実装されているバイナリートランスレーター「Rosetta 2」では、Kernel Extension(カーネル拡張)、及びx86-64ベースの仮想マシン、仮想化ソフトウェアはサポートされない伝えられている事から、エミュレーターとしての機能(命令セットのエミュレーション)を提供しないと伝えられている現状では、Intel Macに向けた これまでの「VMware Fusion」にて作成されたx86-64ベースの仮想マシン(ゲストOS)は、現在開発中の「VMware Fusion(with Apple M1 chip)」では動作しないと結論付けて良いでしょう。
open-vm-toolsのARM版(aarch64)版も利用可能
Linux(ゲストOS)に向けた「VMware Tools」のオープンソース実装「open-vm-tools」 のARM(aarch64)プラットフォーム版は、一部のディストリビューションに向けて提供が開始されています。従って、対応するシステムでは ゲストOS拡張機能をインストールする事によって齎される各種の機能(3Dグラフィックスに向けたアクセラレーション、タイムシンクロナイズ、ダイナミックレゾリューション(フルスクリーンモードを含む)、ゲストOS、ホストOS間におけるテキストのコピーアンドペースト、ファイルのドラッグアンドドロップ等)を利用する事も可能となります。
また、この対応を拡充するために、種々のLinuxアップストリームプロジェクトと協力して、open-vm-toolsをサポートするために必要なカーネルパッチを構築している状況であるとも伝えられています。
WoA(Windows On ARM)の仮想マシンでの実行は?
WoA(Windows On ARM)の仮想マシンでの実行は、技術的に可能であっても製品構成、及びライセンスの壁が実現を阻む事となるかも知れません。これが製版版ではなく、インサイダープレビュー(Windows 11 on ARM Insider Preview)であっても、ライセンス版の「Windows 10」がインストールされたシステムに対してのみ(ゲストOSとして)インストールする事が可能であると解釈する事ができます(つまり、ARM64をゲストOSとして実行可能と許諾しているハードウェアのリストにApple Siliconが含まれていないため、インサイダープレビューであっても、Apple製コンピューターでの実行はグレーゾーンではないか、といった懸念が残ります)。
尚、WoA(Windows On ARM64)をゲストOSとして実行可能なシステムとしては「Microsoft SQ1」「Microsoft SQ2」「Qualcomm Snapdragon 8cx」「Qualcomm Snapdragon 850」が明記されており、このリストに「Apple M1」は含まれていません。VMwareからも、この度のリリースに関連する公式な資料において、Windows on ARM Insider Previewの実行については明言されていないと思います。
今年は有料のアップグレードは行わず、「Apple Silicon」への対応に注力
例年では、10月前後を目処に年次のアップグレード(アップデート)を繰り返して来た「VMware Fusion」ですが、今年は新規のリリースは行わず、前述の「Apple Silicon(Apple M1)」への対応に注力すると伝えられています。
この度リリースされたTech Previewは、2022年の春までは更新を継続すると伝えられており、プレビュー用のライセンスが認証された状態で提供されているので、新たにシリアルナンバー等を入手する必要はありません。期間限定のプレビュー版ではありますが、フリーウェアの様な感じで試用する事ができます(別途に、VMTN(VMware Technology Network)のアカウントは必要となります)。
また、現行GA版「VMware Fusion 12」のサポート期間を2022年12月まで延長し(1年間の延長)、必要な更新を2021年10月から再開する予定であると伝えられています。
「VMware Fusion Tech Preview 21H1 Build 19431034」リリース(2022年3月11日に追記)
米国時間2022年3月10日付にて「VMware Fusion Tech Preview 21H1 Build 19431034(e.x.p. 19431034 Jun.)」がリリースされました。当版では、極めて軽微なバグフィックス、一連のプラットフォームコードのマージ(ユーザーが目にする事のない、テクニカルデヴィットのクリーンナップ)が行われている他、試用期間の延長が適用されています。
また、テストガイドが更新されて、「Windows 11(ゲストOS)」のインストラクション、Linux(ゲストOS)のアップデートと入手先、及び既知の問題点のリストが含まれました(例えば、「Linu kernel 5.16」との互換性問題等)。
尚、「21H1」のバージョンナンバーに関しては、開発サイドも違和感を認めており、これはリリース当時のブランチと、ダウンロードグループのストラクチャーによるものであると伝えられています。