「VMware Fusion 13(13.0.0)」リリース、Apple Siliconホストをネイティブサポート

米Broadcom傘下のVMware, Inc.より米国時間2022年11月18日、macOSベースのデスクトップ仮想化ソフトウェア「VMware Fusion」のアップグレードリリースに相当する「VMware Fusion 13.0.0 Pro Build 20802013(GA版)」がリリースされ、現在VMwareによる公式ダウンロードページを通じて、日本語含む複数言語リソースを包含する マルチリンガル版のバイナリーパッケージが入手可能となっています(x86-64、ARM64両アーキテクチャーにおいてネイティブ実行可能な「Universal 2 Binary」としてビルドされており、Ver. 11以降からは アップデートライセンスにて更新可能となっています)。

「macOS Ventura(macOS 13)」をホストOSとしてサポート

定期的にリリースされていたTech Previewチャンネルの成果がStableチャンネルにマージされ、前日にプロダクトラインマネージャーのMichael Roy(@mikeroySoft)氏から、GAリリースの予告とデモンストレーションムービーの公開が行われていた当版では、一連のテストリリースを通じた主な特徴として、以下の項目等が示されています。

  • アプリケーションアイコンが変更され、最新のmacOSデザインガイドラインを反映した新たなアイコンを採用
  • サポート対象オペレーティングシステムの追加。Appleによるデスクトップオペレーティングシステム「macOS Ventura(macOS 13)」をホストOSとしてサポート(ゲストOSとしての実行は、Appleと協力して解決すべき課題が残されているために現在調査中の段階にあり、短期的にはサポート対象の範囲外になると伝えられています)
  • Microsoftによるサーバーオペレーティングシステム「Windows Server 2022」をゲストOSとしてサポート
  • 新たに「Ubuntu 22.04 LTS(Jammy Jellyfish)」「RHEL 9.0(Red Hat Enterprise Linux 9.0)」「Debian 11.x」をゲストOSとしてサポート。プリコンパイルされたカーネルモジュールを伴う ゲストOS拡張機能「VMware Tools」が同梱され、自動インストール機能「Linux Easy Install(Linux簡易インストール)」オプション、共有フォルダー、ダイナミックレゾリューション等の諸機能を利用可能に(VMwareは、オープンソースのゲストOS拡張機能「open-vm-tools」の利用を推奨している)
  • 単一のアプリケーションパッケージ(VMware Fusion.app)にて、Intel、Apple Silicon(Apple M1、Apple M2)の両アーキテクチャーにおいてネイティブ実行可能な「Universal 2 Binary」としてリリース。複数のライセンスを纏めて展開する組織においては、管理下にある既存のMac、及び新たなMacに対して同じ資産を使用する事が可能(「Parallels Desktop 17 for Mac」以降と同様のアプローチ)
  • Intel、或いはARMベースのSoC(System on a Chip)「Apple Silicon(Apple M1、Apple M2 Mac)」をホストシステムとする環境において、Microsoftによるデスクトップオペレーティングシステム「Windows 11」をゲストOSとしてサポート。「New Virtual Machine Assistant(新規仮想マシンアシスタント)」において、同オペレーティングシステムのISOイメージを正確に認識し、自動インストール機能「Windows Express Install(Windows簡易インストール)」オプション、共有フォルダー、Coherence(コヒーレンス)モード等の諸機能を利用可能に。ARM環境においては 2Dグラフィックス、ネットワーキングにも対応し、ゲストOS拡張機能「VMware Tools」もインストール可能
  • Apple Silicon(Apple M1、Apple M2)ホストにおいて、ARM Linux(ゲストOS)のサポートを改善
  • Virtual TPMモジュールの強化。「Windows 11(ゲストOS)」に向けて新規に作成され仮想マシンに対して、同OSのシステム要件(互換性)を満たすべくして「Virtual TPM 2(Virtual Trusted Platform Module 2、仮想TPM 2)チップが自動的に追加されるべくした改善を適用。この仮想デバイスプロファイルを使用して、高速な暗号化、キーの自動生成、Keychain(キーチェーン)を介したキーストレージを組み込む事が可能となった。尚、vTPMデバイスは 任意の仮想マシンに対して追加する事が可能であるが、当該の仮想マシンにおいては、完全な或いは高速な仮想マシンの暗号化が有効になっている必要がある
  • 高速な暗号化。新たに実装された高速暗号化モードでは、仮想マシンのローカルストレージスペースの最もクリティカルな部分のみが暗号化され、仮想マシン全体のパフォーマンスが劇的に改善されますが、一方では、TPM(Trusted Platform Module)デバイス等のセンシティブなデータに向けた、安全なエンクレーブが提供される。高速な暗号化は、新規仮想マシン作成時におけるウォークスルー中、或いはセッティングエディターにおける「Others(その他)」>「Encryption(暗号化)」を通じて、全ての仮想マシンタイプに対して個別に適用する事が可能
  • 暗号化キーの自動生成と保存。新たな高速暗号化モデルを強化するために、ユーザーのパスワードを自動生成可能に。デフォルトでは、ローカルキーチェーンに暗号化キーが保存され、仮想マシンの起動毎にパスワードを入力する必要がないように配慮されている(パスワードは、できれば使用したくないお荷物のようなものです…)
  • Linux(ゲストOS)において、ハードウェアアクセラレーションによる3Dグラフィックス、及び「OpenGL 4.3」に対応(「Linux kernel 5.19」以上、グラフィックスライブラリー「Mesa 22.1.3」以上を実装する環境において対応)
  • Apple Silicon(Apple M1、Apple M2)ホストにおけるLinux(ゲストOS)サポートの改善。種々のオペレーティングシステムのコミュニティ、Mesa 3D Graphics Library、Linux等のオープンソースプロジェクト、及びゲストOS拡張機能「VMware Tools」のオープンソース実装「open-vm-tools」と協力して、LoA(Linux On Apple Silicon)のエクスペリエンスに多くの機能強化を行った。様々なカーネル関連の問題を解決するために、パッチがアップストリームされた他、3Dグラフィックスに向けたハードウェアアクセラレーション、及び「OpenGL 4.3」「GLES 3.1(OpenGL for Embedded Systems 3.1)」のサポートを「Mesa 22.1.1」以降のLinux(ゲストOS)に齎す「Mesa SVGA」グラフィックスドライバーの機能強化を適用(3Dグラフィックス、及び「OpenGL 4.3」を利用するためには、「Linux kernel 5.19」、及び「Mesa 22.1.1」以降が必要)。尚、「OpenGL 4.3」は、IntelホストにおけるWindows、Linux(何れもゲストOS)においてもサポートされる
  • ARMアーキテクチャーにおける、Windows(ゲストOS)を対象とした2Dグラフィックスドライバー。「Windows 11(ゲストOS)」の外観を可能な限り向上させるために、ディスプレイドライバーモデル「WDDM 1.2(Windows Display Driver Model 1.2)」をサポート
  • 新たにプライベートクラウドプラットフォーム「VMware vSphere 8.0」、Type 1 ハイパーバイザー「VMware ESXi 8」をサポートし、ESXiの標準的なパワーオペレーションをサポート
  • 「VMware ESXi 8」、或いは「VMware vCenter Server 8」を実行するホストシステムに接続し、ローカル仮想マシンのリモートへのアップロード、或いはリモート仮想マシンのローカルデスクトップへのダウンロードが可能に(この機能は、現時点ではIntel Macにおいてのみ利用可能)。また、ローカルデスクトップからリモートサーバーにおいて、新規仮想マシンを作成可能に
  • P2V(Physical to Virtual)マイグレーション(物理PC(実機)からV仮想マシンへのマイグレード)機能を除去
  • And many others…

Apple Silicon on Intel、Intel on Apple Siliconといった、アーキテクチャーをクロスしてのゲストOSの実行には対応しない

GUIクライアント(VMware Fusion.app)を含むアプリケーション全体は、Intel、Apple Silicon(Apple M1、Apple M2)の両アーキテクチャーにおいてネイティブ実行可能な「Universal 2 Binary」としてビルドされていますが、アーキテクチャーをクロスしてのゲストOSの実行(例えばIntelホストにおけるARM(ゲストOS)の実行、Apple SiliconホストにおけるIntel x86_64(ゲストOS)の実行)には対応していません。

「macOS Big Sur(macOS 11.0)」「macOS Monterey(macOS 12.0)」「macOS Ventura(macOS 13.0)」において実装されているバイナリートランスレーター「Rosetta 2」では、Kernel Extension(カーネル拡張)、及びx86-64ベースの仮想マシン、仮想化ソフトウェアはサポートされない伝えられている事から、エミュレーターとしての機能(命令セットのエミュレーション)を提供しないと伝えられている現状では、Intel Macに向けた これまでの「VMware Fusion」にて作成されたx86-64ベースの仮想マシン(ゲストOS)は、Apple Silicon(Apple M1、Apple M2)ホストの「VMware Fusion」では動作しないと結論付けて良いでしょう(Apple Siliconを搭載したMacにおいては、必要なエンジニアリング作業とビジネス価値のバランスを考慮して、x86ベースのゲストOSのインストール、実行をサポートする計画はないと伝えられています)。

「VMware Fusion Player」の個人利用は、引き続き無償にて利用可能。Pro版は「VMware Workstation Pro」も利用可能

「VMware Fusion 12」よりライセンスに大きな変更が行われ、従来までのStandard版が廃止され、代わりに新規の商用ライセンス149ドル(アップグレード79ドル)の「VMware Fusion Player」がラインアップされています。この「VMware Fusion Player」は、個人利用に限り無料にて利用可能となっており、機能的には スナップショットやコンテナ等、現在のStandard版にて提供されている機能が、そのまま引き継がれます。

上位版の「VMware Fusion Pro」も引き続き提供され、こちらは新規ライセンス199ドル(アップグレード99ドル)に設定され、単一のシリアルにて「VMware Fusion Pro」「VMware Workstation Pro」の何れかを3台のコンピュターにまでインストールして実行する事が可能となっています(MacがApple Siliconに移行した後には、Intel版のWindows(ゲストOS)を実行する環境としても、活用する事ができるでしょう)。

当版におけるシステム要件は、64bitプロセッサーを搭載したApple製コンピューター、ホストOSは「macOS Monterey(macOS 12)」以降(「macOS Ventura(macOS 13)」を含む)となっています。Ver. 12にてサポートされていた「macOS Big Sur(macOS 11)」は 対象外となりますので御注意下さい(ゲストOSとしてのmacOSのサポートも「12」〜「13」となります)。また、既知の問題点を含む その他の詳細が、リリースノート、VMTN(VMware Technology Network)等を通じて確認可能となっています。