Time Machine(タイムマシン)

米Appleより開発、提供等が行われている、オペレーティングシステムレベルによるバックアップソリューション。macOS(Mac OS X)を対象プラットフォームとし、米国時間2007年10月26日付にてリリースされた「Mac OS X 10.5 Leopard」において、中核機能の一つとして新たに実装された。「Time Machine.app」は、独立したアプリケーションの一つとして「/Applications」にインストールされているが、その実態は「Terminal(ターミナル、/Applications/Utilities/Terminal.app)」を通じて実行可能な「tmutil」コマンドのGUIフロントエンドとして位置付けられている。

差分バックアップ時には「Hard Link(ハードリンク)」を応用

macOSの起動ボリュームにおける各種のファイルシステムリソースを、指定されたバックアップ先のボリューム(ディスク)に対して、定められたスケジューリングに基づき自動でバックアップ可能としている。

macOSをインストールした後の初回起動時に「Time Machine」の利用を確認すべくしたダイアログボックスが表示され、このタイミングにてバックアップ先のボリュームを任意に選択する。バックアッププロセスは、初回は対象範囲のフルバックアップが実行され、2回目以降は差分バックアップが実行される事となる。

差分バックアップ時において前回のバックアップ時から変更のない項目には「Archive Directory Link」が作成される事となる。この「Archive Directory Link」は、UNIX系ファイルシステムにおける「Hard Link(ハードリンク)」に相当し、オリジナルの項目に対する識別子に相当する(重複したファイルを作成しない)事からストレージ容量の節約にも繋がる。

また、初回バックアップ後にシステムに付与されているコンピューター名を変更した場合にも、次回バックアップ時には、変更結果が当該のフォルダー名に自動的に反映される事となり、バックアップの対象範囲は「System Preferences(システム環境設定)」>「Time Machine」にてカスタマイズ可能となっている。

初回起動時に表示される「Time Machine」のダイアログ
macOS(Mac OS X)をインストールした後の初回起動時に「Time Machine」の利用を確認すべくしたダイアログボックスが表示される

バックアップ先のボリューム(ディスク)

バックアップ先として利用可能なボリュームは、「HFS Plus(Hierarchical File System Plus、Mac OS拡張フォーマット)」「APFS(Apple File System)」にてフォーマットされたUSB、Thunderbolt(サンダーボルト)接続の外付けドライブ(HDD(Hard Disk Drive、ハードディスクドライブ)、SSD(Solid State Drive、ソリッドステートドライブ))、内蔵ドライブにおける別ボリュームが指定されており、「FAT32(File Allocation Table 32)」でフォーマットされたボリュームを選択する事はできない(嘗ては、ワイヤレスバックアップソリューション「Time Capsule」もバックアップ先のストレージとしてサポートされていたが、2018年4月26日に全モデル販売終了と発表されている)

また、複数のシステムにて任意のバックアップボリュームを共有する事も可能となっており、既に当該ボリュームに別のデータが保存されている状態でも、バックアップ先として指定する事が可能となっている。

各種の制御と設定

各種の制御は「System Preferences(システム環境設定)」>「Time Machine」から行う事となり、機能を有効にした場合には、1時間毎にスケジューリングされた自動バックアップがバックグラウンドにて実行される事となる。

リストア時には、前日までのデータは1時間単位、それ以前のデータは1日単位にて当該データのバージョンを任意に選択して復旧する事が可能となっており、リストアしたデータはバックアップ時に格納されていたディレクトリーと同じ階層に復元される事となる。この場合には、1時間毎に作成されたバックアップは過去24時間分、1日毎に作成されたバックアップは過去1ヶ月分、1ヶ月を超過したバックアップは毎週分、各々保存される事となる。

バックアップされたデータは、指定ボリュームにおける「Backups.backupdb」>「username(ユーザー名)」>「year(年)-month(月)-date(日)-time(時刻)」ディレクトリーに暗号化された状態で保存される。バックアップ先のボリュームを含む外付けドライブを別のMacに接続した場合には、当該時点において適切なアクセス権を有していない状態となるため、内部のデータにアクセスする事はできない。これはセキュリティ面におけるメリットである一方、データの移行等を行う事はできないといった制限事項にも繋がる。

バックアップ先として指定したボリュームに必要な空き容量を確保する事ができなくなった場合には警告ダイアログが表示され、必要な空き容量が確保されるまでの間は、当該のバックアッププロセスが保留される事となる。

システム(macOS)のリストアにも対応

「Mac OS X 10.5 Leopard」より、Mac OS Xのインストールプロセスにおけるオプション(別のシステムからデータを移行する際のオプション)の一つとして「Utilities(ユーティリティ)」>「Restore From Time Machine Backup(Time Machineバックアップから復元)」が新たに追加された。

このオプションを実行する事によって、システム(起動ボリューム)全体をバックアップ対象として指定していた場合には、インストールDVDから起動したインストールプロセスにおいて、任意のタイミングのバックアップポイントを指定したシステム全体のリストア(復元)も可能となった(この機能を利用する事によって、システムのダウングレードも可能となる)。

尚、「Time Machine」を通じて外付けドライブにバックアップしたシステムから、ホストコンピューター(Mac)を起動する事はできない。

Apple純正のアプリケーション、システムコンポーネントとの連携

「Time Machine」が提供するバックアップソリューションは、メタデータ検索「Spotlight」「Quick Look」「Mail」「Adress Book」「Photos(旧iPhoto)」等、各種のApple純正ソフトウェア、OS関連テクノロジー等と密に連携しており、連携機能を有するソフトウェアのウインドウを開いた状態で「Time Machine Browser(タイムマシンブラウザー)」(「Time Travel(タイムトラベル)」ウインドウ)を起動した場合には、当該ソフトウェア内で削除した各種のリソース(写真、動画、メール等)を復元する事も可能となっている。

尚、「Time Machine Browser(タイムマシンブラウザー)」を通じたタイムトリップ時に、バックグラウンド(宇宙空間)にて光り輝くオブジェクトは「White Hole(ホワイトホール)」と称されている。