「Parallels Desktop」は、Apple Silicon(ARM Mac)をサポートへ

macOSのハイパーバイザにおいて、Linux、Docker等を実行可能に

世界開発者会議「WWDC 2020(Worldwide Developers Conference 2020)」において発表された ARMベースのSoC(System on a Chip)「Apple Silicon」は、優れた電力効率とグラフィックスパフォーマンスの実現、及び機械学習コア「Neural Engine」の実装等で、Macを次世代へと導く事が期待されますが、一方ではアーキテクチャの変更に伴い、Intel Macにて実現されているマルチプラットフォームへの対応(仮想化、デュアルブート)が継続されるのか、そのロードマップにも注目が集まるところです。

この渦中において、Corel CorporationグループのParallels International GmbHより米国時間2020年6月22日、Parallels Blog(公式ブログ)等を通じて、macOS(OS X)ベースのデスクトップ仮想化ソフトウェア「Parallels Desktop for Mac」におけるApple Siliconへの対応予定等が発表されています。

※以下の記述は、現在知り得る情報から未来を推測した内容が含まれます。現実とは相違している可能性がある事を御了承下さい。

上記の公式リリースやPTN(Parallels Technology Network)に寄せられた情報等を総合すると、Apple Siliconをホストシステムとした将来の「Parallels Desktop for Mac」は、macOSに実装されている「hypervisor.framework」をコアとし、その上で動作する仮想マシンにおいて ARMアーキテクチャのLinuxディストリビューション(Debian GNU/Linux)、Dockerコンテナ等を ゲストOSとして実行可能にすると伝えられています。

ARM Windows(ゲストOS)はどうなる?

Windows(ゲストOS)に関して公式なリリースは発せられていませんが、ARMアーキテクチャをベースとした「Windows 10」にはリテール版(パッケージ版)が提供されておらず、OEMに限定されて使用が許諾されている現状を鑑みると、技術的に可能であっても製品構成、及びライセンスの壁が実現を阻む事となるかも知れません。過去に初期の「Windows Vista」が、ゲストOSとしての使用をEULA(End User License Agreement、エンドユーザ使用許諾契約書)を通じて制限し、よりセキュアで高機能な上位エディションに限定していた事が思い出されます(この制限は、2008年1月に解除されました)。

Intel Macで作成した仮想マシン(ゲストOS)はどうなる?

「macOS Big Sur 11.0」において実装予定とされるバイナリトランスレータ「Rosetta 2」では、Kernel Extension(カーネル拡張)、及びx86-64ベースの仮想マシン、仮想化ソフトウェアはサポートされない伝えられている事から、エミュレータとしての機能(命令セットのエミュレーション)が提供されない限り、Intel Macに向けた これまでの「Parallels Desktop」にて作成されたx86-64ベースの仮想マシン(ゲストOS)は、後に提供予定とされるApple Silicon版の「Parallels Desktop」では動作しない事が予想されます。

※Appleのソフトウェアエンジニアリング担当シニアヴァイスプレジデント、Craig Federighi(クレイグ・フェデリギ)氏が「仮想化フレームワークを通じて、x86プラットフォームを実行する事は可能である」と述べていますが、言及しているエミュレータとしての機能は「macOS Big Sur 11.0」に実装される「hypervisor.framework」ではなく、サードパーティベンダに これを求めていると解釈する方が現実的かも知れません。