世界開発者会議「WWDC 2017(Worldwide Developers Conference 2017)」において「iOS 15」「iMac Pro」等と共に発表され、ファイルシステム「APFS(Apple File System)」、グラフィックスAPI「Metal 2」の実装等が予定される、Appleによる次世代デスクトップオペレーティングシステム「macOS High Sierra(macOS 10.13)」ですが、米国時間2017年6月12日付にて公開されたVMware Fusion Blog(旧Team Fusion、公式ブログ)を通じて、基調講演後に開発者向けに公開された同OSのBeta版を macOS(OS X)ベースのデスクトップ仮想化ソフトウェア「VMware Fusion 8.5」にゲストOSとしてインストールするためのプラクティカルガイド(テストドライブ、ワークアラウンド)が公開されていますので、その内容等を簡単に纏めてみたいと思います。
Table of Contents
新規インストールか、アップグレードインストールか
開発サイドからは、既存のmacOS(OS X、ゲストOS)からのアップグレードインストールが、最も容易で確実なプロセスであると説明されています(インストール時に何れかの問題が発生した場合に、適切なロールバックポイントに復旧する事ができるように、事前に仮想マシンのスナップショットを作成するか、或いはVMware Fusion Proにて作成可能なクローンを用意して下さい。この場合のクローンは、リンククローンではなく、フルクローンが適切でしょう)。
アップグレードインストール時には、物理マシンと同じプロセスが仮想マシンで実行されるため、Appleによるインストラクションを そのまま適用する事が可能となっています。
「VMware Fusion 8.5」で試用するためには
「VMware Fusion」は、米国時間2017年5月18日付にてリリースされた「VMware Fusion 8.5.7(現行GA版)」の段階において、現在開発過程にある「macOS High Sierra Beta(プライベートベータ)」をゲストOSとして正式にサポートしておらず、新規インストール時にエラーメッセージ(Unable to create the installation medium)が表示されたり、ゲストOSのブートボリュームにAPFSが適用されている場合に、UEFIのAPFSドライバーがゲストOSを起動する事ができない、といった問題等が確認されています。
しかしながら、ゲストOSのブートボリュームに「macOS Sierra(macOS 10.12)」までのデフォルトファイルシステム「HFS Plus」が適用されている場合には、アプリケーションパッケージに含まれる「Create Mavericks Installer.tool(/Applications/VMware Fusion.app/Contents/Library/Create Mavericks Installer.tool)」を GitHubにホストされている最新版(VMwareが「macOS Sierra 10.12 Beta」のテスト時に公開した軽量の修正パッチをコミュニティ(有志)がフォークし、修正したツールの更新版)に置き換える事によって、「New Virtual Machine Assistant(新規仮想マシンアシスタント)」を通じて、新規にインストールして実行する事が可能となります(昨年に概説されたプロセスと同様に、GitHubのプロジェクトから.toolをダウンロードして置き換えます。尚、アプリケーションパッケージは通常、単一のファイルとしてパッケージングされたバンドル形式にて提供されており、「Finder」におけるコンテキストメニューを通じて「Show Package Contents(パッケージの内容を表示)」を実行する事により、内包されている各種のリソースにアクセスする事が可能となります)。
パッチの適用後には、「Terminal(ターミナル、/Applications/Utilities/Terminal.app)」を通じて以下のコマンドを実行し、パーミッション(アクセス権)を適切な設定に調整します(要管理者権限)。
sudo chmod 755 /Applications/VMware\ Fusion.app/Contents/Library/Create\ Mavericks\ Installer.tool
sudo xattr -rc /Applications/VMware\ Fusion.app/Contents/Library/Create\ Mavericks\ Installer.tool
問題が解決しない場合には、ホストOS(macOS、OS X)の再起動を試みて下さい(後方互換性は確認していないとの事ですので、試用時には御注意下さい)。
現時点で、APFSには非対応
VMwareのエンジニアは、APFSの新機能の活用に大きな関心を持っているとの事ですが、現時点では APFSが適用された仮想ディスク(.vmdk)にインストールされたmacOS(ゲストOS)は、適切に起動する事ができません。
従って、「macOS High Sierra Beta」をゲストOSとして試用する場合には、インストールプロセスの過程で表示される「Use APFS(APFSを使用する)」メッセージのチェックボックスにチェックが入っていない事を確認して下さい(現時点において、VMware仮想マシン(.vmwarevm)を正常に起動させるためには、このチェックボックスをオフ(アンチェック)にして、APFSへのアップグレードを保留にする必要があります。尚、このプロセスでは「Parallels Desktop 12.1.3(現行GA版)」においても、同じ対応が必要となります)。
このチェックボックスにチェックが入ったままの状態でインストールを実行した場合には、完了後の再起動プロセスが途中で停止ます(APFS UEFIドライバーのエラーに起因して、Boot Manager(ブートマネージャー)が表示され、コンソールウインドウにもエラーメッセージ(No operating system was found.)が表示されます(APFS = no booty))。
その他の注意点
Mac App Storeからインストールイメージ(Install macOS High Sierra 10.13 Beta.app)をダウンロードした場合には、パッケージの全容量がダウンロードされる訳ではありません。リクエストしたインストーラー(アップデーター)の容量は5MBしかなく、アップグレードするためのインストールプロセスの過程において、残りの全容量をダウンロードします(ホストOSを「macOS High Sierra(macOS 10.13)」にアップグレードした後に、インストーラーを再度実行した場合には、インストール前にアップデーターの全容量(約5GB)がダウンロードされる事となります。尚、「Install macOS High Sierra 10.13 Beta.app」における「InstallESD.dmg」に「BaseSystem.dmg」は含まれていません)。
「VMware Fusion 8.5.7」は、ホストOSのファイルシステムの種別に拘らず、「macOS High Sierra(ホストOS)」において適切に実行され、「macOS High Sierra(ゲストOS)」は、小さなパッチが適用されたスクリプト(OSイメージの構造を変更するためのスクリプト)を実行した後に、HFS PlusのゲストOSとして実行されます。
また、Apple Developerから「macOSDeveloperBetaAccessUtility.dmg」をダウンロードして、内包されている「macOSDeveloperBetaAccessUtility.pkg」をインストールすると、その後は「System Preferences(システム環境設定)」>「Software Update(ソフトウェア・アップデート)」から「Install macOS High Sierra 10.13 Beta.app」のアップデーターをダウンロードする事が可能となります。
※当エントリー、及び当エントリーが参照している公式ブログの互換性情報は、何れも「VMware Fusion 8.5.7 Build 5528452(現行GA版)」「macOS High Sierra Beta」時点における情報を採り上げています。双方のアップデートに伴い、制限事項の緩和や注意事項の追加、変更等が生じ得る事を御了承下さい。また、この度の情報は公式ブログを通じて紹介されていますが、現時点で「macOS High Sierra(macOS 10.13)」は「VMware Fusion」におけるゲストOSとして正式にサポートされていませんので、試用される場合には御注意下さい(現時点において試験段階にあるため、本番環境での使用は推奨されておらず、利用可能な機能においても、動作の安定性等が保証されるものではありません)。各種ソフトウェア、ハードウェアとの互換性の現状等、テストを通じて得られた種々の体験は、公式ブログのコメントやコミュニティのフォーラム等を利用して、フィードバックを提出すると良いでしょう。
VMwareからは、「macOS High Sierra(macOS 10.13)」がGA版としてリリースされた後に、2017年の秋にリリース予定とされる次版(恐らく「VMware Fusion 9」)において、ゲストOS、ホストOS共に 正式にサポートする予定であるとの意向が示されています。