WordPressのフルサイト編集と「Twenty Twenty-Two」

CMS(Contents Management System)のカテゴリーにおいて大きなシェアを獲得し、世界レベルで影響力を高める「WordPress」は現在、コンテンツ管理の手法を再構築するとの目標を掲げて「Gutenberg」プロジェクトに取り組んでいます。

同プロジェクトは、最初のフェーズ(フェーズ1)において コアにブロックエディターをマージした後に、現在は次のフェーズ(フェーズ2)に移行して、Full Site Editing(フルサイト編集)機能の実装に注力しています。

投稿(post)やページ(page)のコンテンツのみならず、グローバルスタイル要素を含めたサイト全体をブロックにて構築するフルサイト編集は、専用のテーマを必要とする等、既存のテーマからの移行は労力を要すると予想されます。しかしながら、将来的な導入を見据えた準備として、先ずは試験的に取り組んでみると良いでしょう。

※WordPressのテーマ(雛形)では、マスターページに相当する固定の構成部をグローバル要素、個々のポスト(ページ)のコンテンツ部分に相当する可変の領域をページ要素と定義しています。

Full Site Editing(フルサイト編集)のテストに必要な環境

フルサイト編集は、テーマ一つをとっても既存のテーマとは互換性がなく、各種のスタイルはtheme.jsonを通じて編集する事となります。これに伴い、ビルトインのカスタマイザーを通じてグローバル要素を編集する従来までのテーマは、正式に「Classic Theme(クラシックテーマ)」として分類される事となります。

従って、フルサイト編集をテストする場合には、既存のサイト(本番環境)を壊してしまわぬように、ローカル環境にWordPressのテストサイトを構築する事を推奨します。これには「Apache」等のWebサーバー(HTTPサーバー)、「MySQL(マイエスキューエル)」等のデータベース管理システム、「PHP(ピーエイチピー)」等のWebプログラミング言語が必要となってきますが、WordPressを含めたこれらのツールを一つのアプリケーションとしてパッケージングした「Local by Flywheel」の利用が簡便です。

また、フルサイト編集にてサイトを構築するためには、専用のフルサイト編集テーマが必要となります。現時点で数的にはさほど多くありませんが、WordPress.orgとAutomatticを中心に、フルサイト編集に対応したテーマが出始めています。

WordPress.orgからは「Twenty Twenty-One」のブロックテーマ「TT1 Blocks」、2022年のデフォルトテーマ「Twenty Twenty-Two」がリリースされている他、Automatticの「Blockbase」は、フルサイト編集の基礎を学ぶのに適したテーマと言えるでしょう。

フルサイト編集のインターフェイス

「WordPress 5.9」以降においてフルサイト編集テーマを有効化すると、管理画面のグローバルナビゲーションの中段に、新たな項目として「エディター(ベータ)」が追加されます。

この「エディター(ベータ)」項目をクリックすると、フルサイト編集の作業エリアが表示されるので、用意された各種のテンプレートにブロックを組み上げて行く事となります。また、作業エリアの右サイドバーには、アクティブなブロックのプロパティが編集可能な形で表示されるので、サイズやマージン、スタイル等の各要素を、数値やスイッチ、多肢選択等で定義する事も可能となっています。

WordPressのフルサイト編集
↑WordPressのフルサイト編集インターフェイス。サイトエディター自体は、現時点においてもBeta版の扱いとなっている

2022年のデフォルトテーマ「Twenty Twenty-Two」

ほぼ毎年リリースされているWordPress.orgのデフォルトテーマも、「WordPress 5.9」に合わせてロールアウトされた2022年版の「Twenty Twenty-Two」より、フルサイト編集テーマとなりました。Beta版では、基本項目のみを残して存続していたカスタマイザーは、GA版において完全に撤去されています。

ウィジェットを含むグローバル要素も、バリアブルなページ要素も、全てをブロックのインターフェイスにて構築するフルサイト編集テーマは、出力される各ページのソースを確認しても、表現と構造を分離した従来までのクラシックテーマとは一線を画した印象を受けます。

サイトエディターのインターフェイスにも、まだまだ改善の余地はあると感じますし、果たして一般に受け入れられて標準化して行くのか。もう後戻りはできない、前進あるのみのプロジェクトであると感じるだけに、今後の動向にも注目していきたいと思います。